経済・社会

2025.06.23 08:30

グローバリゼーションが終わり、多党制の時代が始まる 21世紀シン・政治論

Shutterstock.com

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「グローバリゼーションの終焉」というテーゼが劇的に展開されるなかで、筆者が『The Levelling(仮訳:世界を均(なら)す)』という本のなかで提示していたシナリオのうち、とくにスペキュレイティブ(思弁的、投機的)なもののいくつかが現実味を増している。そのひとつは、21世紀の課題に対応し、場合によってはそれを悪化させるような新しい政党が、各国に登場してくるというものである。筆者はとくに米国や英国を念頭に置いていて、さらに言えば中国でも起こり得るのではないかと考察していた。

政治的起業、つまり新党の結成が比較的容易なフランスのような国と違い、英語圏のふたつの大国である米国と英国では二大政党制が支配的となってきた。米国では選挙戦において資金集めが決定的に重要なため、共和党と民主党による支配構造を崩すのが困難になっている。他方、英国では、各選挙区で最も多く票を獲得した候補が当選する小選挙区制(ファースト・パスト・ザ・ポスト=FPTP)が立ちふさがり、新しい政党が労働党と保守党の影響力を落とすほどの勢力を得るのを難しくしてきた(デュヴェルジェの法則)。

ところが、英国でこうした「壁」は、リフォームUK(英国改革党)の台頭と自由民主党のある種の復活によって、いまや打ち壊されたように見える。両党は議会での議席数は依然として限られるものの、最近の補欠選挙で勝利しており、世論調査が正しければ英国の政治システムは4つの政党に分裂しつつあるようだ。

エコノミスト誌の調査部門エコノミスト・インテリジェンス・ユニットの評価で、世界の人口のうち「完全な」民主制国家に住むのはわずか6%にすぎないという現状に鑑みれば、米国の政治が、独裁制と寡頭制のせめぎ合いという方向に傾きつつあるのは憂慮すべきことだ。この対立は先日、ドナルド・トランプ大統領と、その取り巻きの富豪のひとりイーロン・マスクの諍いで露見した。

まだちょっと可能性がちらついた程度の話だが、筆者にとって興味深かったのは、マスクが「アメリカ党」なる新しい政党を設立するぞと脅しをかけたことだった。もしこうした構想が実現すれば、それは新たな世界秩序への移行で重要な役割を果たすことになるに違いない。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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