わたしたちの社会生活や政治生活へのソーシャルメディアの流入は、現実に対する認識を形づけると同時に曖昧にもしている。また、多くの政治体制において、ソーシャルメディアは有権者に素早くリーチし、彼らの選好を理解するための最も有効な手段となっている。この点で、ソーシャルメディアは有権者を「軟化」させるのに役立っている(たとえばリフォームUKはTikTokを巧みに活用している)。
もっとも、だからといって有権者が「ガバナンス党」のような統治形態を受け入れるかどうかは未知数だ。社会信用スコア制度の普及した中国は、見方によれば先駆けと言えるかもしれない。米国の対中強硬派(地政学的観点からの)には、実のところ中国の統治手法に敬服している者も少なくないと言われる。
マスクが率いていた「政府効率化省(DOGE=ドージ)」や、米国防総省の先進的なプロジェクトのいくつかは、国家におけるテクノロジーのあり方に関するビジョンを垣間見せてくれる。もし「ガバナンス党」という構想が現実のものになるとすれば、その兆候として注目すべき動向は▽公式経済のさらなるデジタル化(「中央銀行デジタル通貨」の導入など)▽身分証明や民主制度のデジタル化(有権者IDが虹彩認証になるほどまで)▽法執行分野でのデジタル技術の活用──などだろう。
一方、民主制を支持する側は、開かれた民主制を守るための闘いで、それと正反対の目標を、同じくらいの強さで追求していくことになると予想される。たとえば▽政治議論に対するソーシャルメディアの影響を抑制する▽若者のソーシャルメディアの利用を制限する▽公共生活への積極的な参加を奨励する──といったものだ。


