トランプ政権は米国時間6月20日、米国政府が所有する報道機関「Voice of America」(VOA)のスタッフ数百人を解雇すると発表した。これはトランプ政権下の連邦政府全体で行われている大規模な人員削減の一環だ。
USAGMおよびVOA職員639人に解雇通知、組織の大幅縮小へ
米国グローバル・メディア庁(USAGM)を長官として率いるカリ・レイクは声明で、米国時間6月20日付でUSAGMおよびVOAの職員639名に解雇通知を送付したと発表した。これはUSAGMの人員を85%削減する大規模計画の一環だ。
レイクの声明によると、今回の解雇後、USAGM、VOA、キューバ放送局(Office of Cuba Broadcasting)で現在も残るのは250人の職員のみで、同庁の幹部は最終的に81人のみが残る計画を承認したという。
VOAは米国政府が資金を援助する報道機関で、世界40以上の言語でニュースや情報を放送し、検閲が厳しい国々に正確なニュースを届けている。
今回の解雇は、レイクとトランプ政権がUSAGMを解体する取り組みの一環だ。レイクは3月、USAGMは「立て直し不可能で、法律で義務付けられた最小限の存在と機能にまで大幅に縮小する」と主張していた。
「83年間の独立したジャーナリズムの死」と非難する訴訟も
VOAの解体に対して訴訟を起こしている原告らは、NPR(米公共ラジオ)への声明で、金曜日の解雇は「世界中で米国の民主主義と自由の理想を支持する83年間の独立したジャーナリズムの死を意味する」と述べた。
トランプ政権とVOAをめぐる訴訟は継続中だが、裁判所は一時的にトランプ政権が従業員を解雇することを認めている。今後、訴訟がどれだけ長期化するかは不明で、最終的な判決もわからない。
イラン報道強化の直後に解雇発表
今回の解雇発表は、VOAがイスラエル・イラン紛争の報道強化のため、行政休職中だった多数のファルシ語(イラン標準ペルシア語)話者職員を復帰させてからわずか数日後に行われた。VOAはイラン向け放送について「イラン政権の偽情報と検閲に対抗し、イラン国民および世界のペルシャ語話者の離散民族に直接語りかける米国の取り組みを強化する」と説明してきた。原告団によれば、今回の解雇通知には復帰したばかりの職員も多く含まれており、彼らは9月1日までVOAで勤務を続ける予定である。
連邦政府全体で進行中の大規模な人員削減の一部
VOAでの解雇は、連邦政府全体で進行中の大規模な人員削減の一部である。トランプ政権と、かつてイーロン・マスクが率いた政府効率化省(Department of Government Efficiency、DOGE)は「無駄な政府支出」の削減を掲げ、内国歳入庁(Internal Revenue Service)、社会保障庁(Social Security Administration)、教育省(Department of Education)、保健福祉省(Department of Health and Human Services)、国務省(Department of State)、国防総省(Department of Defense)など多くの機関で数千人規模のレイオフを実施してきた。
USAGMは、米国国際開発庁(U.S. Agency for International Development、USAID)や教育省と並び、人員削減を超えて組織そのものと業務が解体の対象となっている機関のひとつである。こうした措置は各所で提訴されており、結果はまちまちだが係争は続いている。



