米航空宇宙局(NASA)の太陽探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」が6月19日、3回目にして最後の太陽最接近に挑み、太陽の表面からわずか610万km以内を飛行した。2024年12月24日、今年3月22日に続く歴史的偉業の達成となる。
厚い耐熱シールドで保護されたパーカー・ソーラー・プローブは、2018年8月12日に打ち上げられて以来、周回軌道上で最も太陽に近づく太陽近日点通過をこれまで23回にわたり実施。太陽に史上最も近い位置から観測を行うフライバイ(接近通過)も2回行い、今回みたび太陽表面から610万km以内まで接近した。
ミッションの科学チームによれば、これは地球と太陽の間の距離がアメリカンフットボールのフィールドの全長だとすると、エンドゾーンから4ヤード(約3.7m)しか離れていないという。
最後のフライバイの間、探査機の速度は時速約69万kmに到達。NASAは、米東海岸のフィラデルフィアから首都ワシントンまで1秒で移動できる速さだと説明している。
24回目の近日点通過でもある今回の最接近では、870~930度の過酷な高温にも耐えなければならなかった。温度と極端な紫外線の両方から探査機を守る装甲は、炭素複合材でつくられたシールドだけだ。
パーカー・ソーラー・プローブは現在、高楕円軌道を88日かけて周回している。楕円軌道を描くことで、太陽に繰り返し接近して観測ができるのだ。
太陽コロナの謎
ミッションの主な目的のひとつは、太陽の最も外側の大気層であるコロナの温度が、光球の表面より100万倍も高温なのはなぜかを解明することである。
コロナは太陽風の発生源であり、宇宙天気を高い精度で予測するためには、太陽物理学によってコロナに関する理解をもっと深める必要がある。地球の大気と相互作用する荷電粒子の流れである太陽風の変動は、地球にオーロラを発生させるだけでなく、人工衛星に障害を引き起こしたり、宇宙飛行士の健康を害したりする恐れがある。このため、より正確な宇宙天気予報の実現が重要なのだ。
パーカー・ソーラー・プローブのミッションの後半は、太陽の第25活動周期の極大期と重なっている。太陽の磁気活動は11年周期で変動するが、今は最も活発な時期だ。



