イスラエルとイランによる攻撃の応酬は、ここ数日で危険な段階に入っている。発端はイスラエルによるイランの軍事施設や核施設に対する攻撃だった。13日に緊張が高まって以来、国連や米国、英国、欧州連合(EU)などから自制を求める声が上がっているが、効果は出ていない。
これまでのところ、戦闘は交戦当事国のイスラエルとイランに限定されている。だが、攻撃の激しさから、原油の主要供給元であるこの地域のより広範な紛争に発展する懸念が高まっている。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は13日、イスラエル軍がイラン国内深くの核目標や軍事目標を攻撃したと明らかにしたうえで、すべての目的が達成されるまで作戦を続ける考えを示した。
イスラエルはイラン中部ナタンツにある主要なウラン濃縮施設や首都テヘランのほか、西部アラク、中部イスファハンなどの施設を次々に爆撃している。イランは報復として、弾道ミサイルなどでイスラエル国内を攻撃している。
イランはまた、米国と続けていた核協議を中止したほか、米国、英国、フランスに対し、イスラエルに対する攻撃の阻止を支援すれば域内の軍事基地や艦艇を攻撃すると威嚇した。
重要なのは、イスラエルによるイラン国内への攻撃ではいまのところ、石油・ガスインフラの被害は限定的だという点だ。しかし、今後どうなるかは予断を許さない。14日深夜にはテヘランの石油貯蔵施設がイスラエルの攻撃を受けたほか、それに先立ちイラン南部の天然ガス田も攻撃されている。
もしイランのエネルギーインフラがもっと広範に攻撃され、報復としてイランが地域のエネルギー供給を妨害したり、米国を紛争に巻き込んだりしようとすれば、石油市場には軽微なものから深刻なものまで、さまざまな程度の影響が及ぶだろう。
予測不能で急激にエスカレートしているこの紛争でイスラエルとイランが今後とり得る行動をもとに、考えられる最悪のシナリオを5つ示す。
1. イスラエルがハールク石油ターミナルを破壊する
イスラエルは、イラン北西沖約25kmのハールク(カーグ)島にある石油ターミナルへの攻撃に踏み切る可能性がある。ハールク石油ターミナルはイランが輸出する原油の90%超を積み出している施設だ。



