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2025.06.20 18:00

緊迫イスラエル・イラン紛争、石油市場が身構える「5つの最悪シナリオ」

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さらに、ホルムズ海峡の輸送が混乱すれば、イランの最大の原油輸出先である中国の怒りも買うことになるだろう。イランは昨年、日量平均165万バレルの原油を中国に輸出していた。ホルムズ海峡を通過する原油と石油製品は日量平均2050万バレルにのぼり、うち原油の半分近くは中国向けとなっている。つまり、イランが仮にホルムズ海峡の閉鎖に踏み切っても、中東産原油の世界最大の輸入国である中国からの強い圧力にさらされることになるため、維持することは非常に難しいと考えられる。

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5. イランが湾岸地域の軍事基地や石油施設を攻撃する

米国を紛争に引きずり込むため、イランが直接、あるいはイラクやイエメン、レバノン、ヨルダン川西岸地区、ガザ地区の代理勢力を通じて、近隣の湾岸諸国のエネルギーインフラを攻撃する可能性もある。

これには前例があるとされ、たとえば2019年のサウジアラビアの油田に対する攻撃や2022年のUAEへの攻撃は、イランが関与したと非難されている。イラン自体による直接攻撃という選択肢は残るが、域内の代理勢力であるハマス(ガザ地区)とヒズボラ(レバノン)はイスラエルによる継続的な作戦によって著しく弱体化している。

ただし、イランが当てにできる残された唯一の代理勢力であるフーシ派(イエメン)はなお、紅海で2023年から続けている商船や石油・ガス貨物への攻撃を強化できる態勢にある。

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エネルギーインフラは別として、イラン当局は14日、米国、英国、フランスがイスラエルの防衛に動くと判断された場合、域内にあるこれらの国の軍事基地を攻撃すると警告した。3か国はいずれも、湾岸地域に特殊部隊の拠点や大規模な外交使節団も置いている。

このシナリオは各国のインテリジェンス・コミュニティーで広く検討されており、米国の地域部隊は状況を綿密に監視している。英国は「地域全体の有事支援」のため、現地に軍用機を増派する決定をした。

こうしたエスカレーションは、より広範な地域戦争に発展するおそれが強く、石油輸送の混乱が長引けば中国も外交対立に巻き込まれる可能性が高い。

現状では、もしこれら5つのシナリオのひとつもしくは複数が現実のものになった場合、とりわけ、イスラエルによるイランのハールク石油ターミナルに対する攻撃が実行された場合、世界の石油・ガス市場に重大な影響を及ぼしかねない。その結果、短期的にはエネルギー価格の高騰が避けられないだろう。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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