3. イスラエルがイランの天然ガス産業を機能不全に陥らせる
石油の生産施設や輸出施設でなく、イスラエルはイランの天然ガス産業にダメージを与える計画を実行する可能性もある。イランは年間2700億立方メートル強の天然ガスを生産しており、ほとんどが国内消費向けだ。
イスラエルはすでに、イラン南部沖合のサウスパース・ガス田第14フェーズなど天然ガス田2カ所を攻撃している。これらの攻撃は、天然ガスをターゲットとする今後の攻撃の前触れかもしれない。イラン国内の天然ガス田に対する攻撃は、世界の天然ガス産業にはほとんど影響を及ぼさないだろうが、サウスパース・ガス田が地下でカタールのガス田とつながっている点には留意しておく必要がある。
イランの天然ガス生産が世界全体に占める割合は6%強となっている。国内供給が停止した場合、政府は需要を満たすために代替調達先を探す必要があるかもしれないが、国際的な制裁下ではそれも難航しそうだ。
4. イランがホルムズ海峡の封鎖を試みる
報復措置としてイランがホルムズ海峡の封鎖に踏み切る可能性があるのかについては、多くの人が検討している。ホルムズ海峡は石油や液化天然ガス(LNG)の海上輸送の大動脈であり、ペルシャ湾から出荷された製品はオマーン湾、その先へ抜けるためにここを通過しなくてはならない。
ホルムズ海峡を通過する貨物の輸送量を考えれば、封鎖の可能性が議論の的になるのは当然だ。当のイランに加え、サウジアラビア、クウェート、イラクで生産される原油、さらにアラブ首長国連邦(UAE)産の原油の一部がこの海峡を通っており、その量は世界で取引される原油全体のおよそ3割にのぼる。また、カタールのLNG輸送船も日常的にホルムズ海峡を通航している。
イランがホルムズ海峡の封鎖を試みることはたしかに可能だが、実行に移す可能性はきわめて低い。イランでは一部の若手政治家らが封鎖を訴えているものの、まずもって、そうすればイラン自体の石油輸出に支障が出る。
また、封鎖が実行された場合、米国主導の国際的な報復行動を招く可能性が高く、そうなればイランの沿岸部やすべての港湾が米国の圧倒的な航空戦力や海軍戦力による攻撃にさらされることになる。近隣のバーレーンには米海軍第5艦隊が司令部を置く。


