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2025.06.20 18:00

緊迫イスラエル・イラン紛争、石油市場が身構える「5つの最悪シナリオ」

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ハールク石油ターミナルがイスラエルの攻撃で稼働不能に陥れば、影響は即座に連鎖的に広がるおそれがある。非常に大規模な混乱が、とくに世界最大の原油輸入国である中国向けの輸出に起こるかもしれない。

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短期の原油価格がさらに急騰するだけでなく、4~6カ月先の先物契約の相場も上昇する可能性がある。いったんこの石油ターミナルが破壊されれば、復旧・再稼働は容易でなく、時間がかかるとみられるからだ(編集注:ロイター通信は17日、ハールク石油ターミナルは13日以降、活動を完全に停止しているようだと伝えている)。

2. イスラエルがイラン国内のエネルギー供給網に壊滅的打撃を与える

ハールク石油ターミナルのような注目度の高い原油輸出拠点を狙う代わりに、イスラエルはイラン国内のエネルギー・サプライチェーン(供給網)をたたくかもしれない。テヘランのシャフラン石油貯蔵施設が14日に攻撃されたことはこの見方に説得力を与えるだろう。

この戦術が広範に展開された場合、イラン南部ホルモズガン州のより大規模な石油施設クラスターが攻撃目標になる可能性がある。同州には石油ターミナルをはじめとする石油拠点が集中する。ホルモズガン州にはキーシュ島とゲシュム島という2つの自由貿易地域もあり、キーシュ島には米ドル建て以外で原油や石油派生商品が取引される世界で唯一の石油取引所がある。

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イラクとの国境を流れるシャット・アルアラブ川(イラン側呼称・アルバンド川)の東岸に位置するアバダン製油所も、イスラエルの攻撃対象になり得る。アバダン製油所は国内向けの施設で、製油能力に関する最新の信頼できるデータは見つけにくいが、推定や地元メディア(フィナンシャル・トリビューン紙など)の報道によれば日量約40万バレル生産している可能性がある。

アバダン製油所は象徴的な存在でもある。1909年にアングロ・ペルシャン石油会社(のちのBP)によって建設されたこの製油所は、イラン最古の石油精製施設なのだ。現在もイラン国内の燃料需要のおよそ25%を供給しており、仮にここが停止すれば、イランの消費者だけでなく軍隊にとっても深刻な打撃になるだろう。

関連して、ホール・ムーサ水路にあるマフシャフル石油ターミナルも狙われる可能性がある。この石油ターミナルはアバダン製油所で生産された製品の保管や輸送を担っているほか、イランにとって土木や桟橋建設の拠点にもなっている。

これらの施設のどれかがイスラエルの攻撃を受ければ、イラン国内のエネルギー供給網は深刻な影響を被る可能性が高く、政府は資源配分の見直しを余儀なくされるかもしれない。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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