起業家

2025.06.24 13:30

トランプと組む中国人起業家、彼は模倣王か天才か

中国人ブロックチェーン起業家のジャスティン・ サン

暗号資産取引所のバイナンスで、トロンは7000万ドルのICOを成功させる。17年8月、中国投機的なICOが全面禁止されるほんの数日前のことだった。片や、この新しいブロックチェーンには創業当時から、そのホワイトペーパーがイーサリアムともうひとつ別のブロックチェーンの文書を盗用しているという疑惑が付きまとった。そのためイーサリアムの共同創業者であるヴィタリック・ブテリンは、サンに向けた挑発的なコメントを発信している。

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そんな逆風もどこ吹く風、トロン上で発行されたUSドル連動のテザー社のステーブルコイン、USDTの取引規模が急伸。それに合わせてビジネスを拡大させたトロンは、世界に3億人のユーザーを抱え、月間取引高は5000億ドルを超えるまでになった。24年、トロンのブロックチェーン収入は22億ドルで、イーサリアムの25億ドルに次ぐ第2位だった。

開拓時代の米国西部の様相を呈する暗号資産の世界で、急成長を遂げたトロン。だが手数料の低さなど、まっとうなユーザーにとって魅力的なトロン上のUSDTの特徴は、同時にテロリストや麻薬密売人、資金洗浄者や詐欺師も引き寄せてしまっていた。ブロックチェーン情報分析会社のインカ・デジタルは、ハマスやヒズボラを含むテロ組織がサンのブロックチェーンを使って20億ドル以上の資金を動かしていることを確認したという。また、暗号資産関連のセキュリティツールを提供するTRMラボの犯罪報告書によれば、24年に行われた不正な暗号資産取引のうち、100億ドル近くに相当する58%がトロン上で発生。これはイーサリアムとビットコイン上で行われた不正取引の総額を上回っている。

サンは、トロンをより安全にするために取り組んでいると主張。24年9月、トロンとテザー、TRMラボの3社は、トロン上での不正な活動の一掃を目指す業務提携を発表した。その名も「T3金融犯罪対策ユニット(T3 Financial Crime Unit)」だ。T3いわく、創設以来1億3000万ドルが凍結されていると説明する。

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しかし米国では、その主張に懐疑的な見方が大勢を占めるようだ。ステーブルコインを発行するサークルは、サンのブロックチェーンとの取引を全面的に停止。そのうえ24年12月には、優良取引所のコインベースが、イーサリアム上で動くビットコインの一種でサンが影響力をもつと広く噂される「ラップドビットコイン(wBTC)」の上場を廃止した。

物議を醸す野心家の「次なる一手」

こうした事情を鑑みると、サンがトランプと手を組んだタイミングはなおさら好都合だ。まだ大統領自身に会ったことはないものの、彼は最近、息子のエリックとドナルド・ジュニアとは一緒に時間を過ごしたらしい。ふたりは、トランプの友人で中東担当の大統領特使を務めるスティーブ・ウィトコフの息子とともに、WFLのパートナーになっている。

人々に信用されなければ暗号資産ビジネスは成り立たないと、サンは重々承知している。そのため米国大統領がこの市場に飛び込めば、個人投資家の間で暗号資産の信頼性が増すと信じて疑わない。「$TRUMPは、Web3と従来の世界の境界を打ち崩しています。私の母親にさえ、あのトークンのことを聞かれましたから」
 
実際、WLFは3月、独自のステーブルコインとなるUSD1の発行計画を発表した。米短期国債やドル預金、その他の現金同等物で裏付けられるというコインだ。しかし、連邦議会で審議されているステーブルコインに関する法案が近く大統領の机で署名を待つことになるかもしれない現状を考えれば、利益相反は見落としがたい。

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文=スティーブン・アーリック & ニーナ・バンビシェバ 写真=ガレス・ブラウン 翻訳=木村理恵 編集=加藤智朗

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