1月にトランプ大統領がミームコインの「$TRUMP」を発行すると、また彼はそこに数百万ドルを投資した。これらの投資は結局のところ、少額のリターンしか生み出していない。しかし一方で、トランプ一族に推定4億ドルの棚ぼた利益をもたらしている。こうした貢ぎ物には効果があったようだ。サンはその直後、WLFのアドバイザーに任命された。さらに25年初頭、トランプが大統領に就任後、SECはコインベースやクラーケン、ロビンフッドを含む、暗号資産取引で違反の疑いがある事業者に対する訴訟や捜査を事実上すべて取り下げた。SECはサンとその会社各社に対する訴訟も「いったん停止する」という。これが、暗号資産業界で最も旺盛に取引を繰り広げるビリオネアの生き方だ。
サンが創業した、または支配権をもつ企業のほぼすべてがほかの先行企業の事業モデルを模倣していることは有名だ。現時点では、それが奏功している。子どものころに崇拝していたトランプと同じく、どうやらサンも米フォーブスによる自身の保有資産額の報道を切望していたらしい。今回、その数字が400億ドル超だと本誌に語っている。大量に保有するビットコインやイーサなどの暗号資産に加え、ピカソやウォーホールなどの美術品、さらにエアバス330ジェット機も1機保有しているという。
トランプの話す内容もそうだが、サンの話も総じて額面通りには受け取りにくい。米フォーブスは本人が主張する複数の資産の価値をかなり差し引いて見積もり──例えば、彼が個人で保有する大量の暗号資産をしまい込んでいるという取引所のHTXもそうだ──より少額かつ未確認の多くの資産については完全に除外した。それだけ懐疑的な見方をしたにもかかわらず、試算ではサンの保有資産額は85億ドルにもなる。しかも、それより大幅に大きい可能性がある。
トロンの急成長、付きまとうサンへの疑惑
1990年にチベットに隣接する辺境の青海省に生まれたサンは、4歳で家族と活気にあふれる広東省に移り住んだ。両親の影響で文学にのめり込むが、北京大学へ進学後は世界史を学んだ。多くの野心的な中国の学生の例に漏れず、彼も次のステップとして米国に目を向け、2011年にはトランプの母校であるペンシルベニア大学に入学、政治経済学の修士号の取得を目指した。しかし12年、ビットコインについて書かれたニューヨークタイムズ紙の記事を読んですべてが変わる。友人との少額の取引から始まって、サンはビットコインに夢中になり、この新しい技術に関して見つけられるあらゆる情報をむさぼるように吸収していった。
このときに参加していたフォーラムで、当時リップル・ラボの最高技術責任者(CTO)を務めていたステファン・トーマスと知り合ったのをきっかけに13年、サンはリップルの中国での首席代表になる。同社は、世界の銀行間メッセージングネットワーク、SWIFTを代替する分散型の仕組みを構築しようとしていた。20代前半の若さで、なかなかの成功だろう。
ところがリップル入社から程なくして、「スマートコントラクト」でより高度な機能に対応するブロックチェーン、イーサリアムが新たに業界を席巻。14年のイーサリアムの新規暗号資産公開(ICO)に、サンも投資している。しかし、イーサリアムの取引処理速度はビットコインにべれば格段に速いものの、それでもまだ遅過ぎると考えるようになった。 一方で当時、リップルはスマートコントラクトの統合にてこずっていた。そのとき、サンは雷に打たれたかのごとくひらめく。XRP(リップルの暗号資産)のスピードをもち、スマートコントラクトを備えた新しいブロックチェーンがあればいいのだ、と。彼は15年にリップルを退社し、その2年後にトロンを立ち上げた。


