韓国国内では政治的分断も広がるか
今回の日韓首脳会談の成果は、イ大統領になるとムン・ジェイン(文在寅)元大統領のときのような日韓関係の悪化を懸念していた人たちにとっては歓迎すべきニュースとなった。
しかし、韓国の国内ではまだイ大統領への全面的な信頼はなされていない。なぜなら、今回の韓国の大統領選挙は、「内乱・戒厳勢力に政権は絶対に渡せない派」と「イ・ジェミョン氏だけは絶対に大統領にしたくない派」の闘いだったからだ。
大統領選ではジェンダーや世代、地域の分裂があり、イ大統領を応援する人はやっと過半数を超えた。ということは、逆に半数近い「イ・ジェミョンだけは大統領にさせたくない」と思っていた人もいるわけだ。
なぜ、イ大統領を嫌うのかは、やはり彼にかけられた疑惑の多さからだといえる。現在、イ大統領は当選したためにすべての裁判から解放されている。しかしイ大統領は複数の犯罪疑惑で裁判を受けており、これに対する懸念が強い。ムン・ジェイン政権で政務首席を務めたチョン・ビョンホン(田炳憲)氏もこの点を挙げ、「絶対に大統領になってはならない」と強調したことがある。
そして、選挙の結果でもわかるように、国民の間で政治的な分断が深まる可能性があることも懸念されていた。イ・ジェミョンは選挙演説で「内乱勢力の復帰を防がなければならない」と強調したが、一方でこうした強硬な発言が社会の分裂を悪化させるとの批判もある。
「国民の力党」(保守系政党)や保守層の間では、イ大統領に対する反対意見は強く、彼を「嫌悪感をあたえる人物」と評価することも多い。
イ大統領は強い政治スタイルと数々の論争により毀誉褒貶も激しく、支持層と反対層がはっきり分かれる人物だ。彼の独特でアウトサイダー的な面が一部からは非民主的だとも批判されることもある。
とりあえず、イ大統領は今回の日韓首脳会談という外交面では、好ましい成果を見せた。彼は、困難な少年時代を乗り越え、労働者から人権弁護士となり、ついに大統領にまで上り詰めたという、どん底から裸一貫でのし上がってきた人物なので、またここからその底力を発揮して、広がっている懸念を払拭するかもしれない。


