英国で最も著名なビジネスリーダーの一人であるジェームズ・ダイソンは、英国で昨年7月に14年ぶりに誕生した労働党政権が、国家の将来の繁栄を脅かす政策を推し進めていると非難している。
「この国には、数多くの若く野心的な起業家がいる。だが、彼らの成功への意欲が税金と規制で罰せられるのであれば、才能と志を持つ者はアイデアを携えてこの国を去ってしまう」とダイソンは6月17日に英紙サンに寄稿したコラムの中で述べている。
彼が創業した家電メーカーの「ダイソン」は現在、シンガポールに拠点を置いているものの、英国で2000人を雇用しており、直近の会計年度に1億300万ポンド(約200億円)を英国政府に納税していた。
2006年にナイトの称号を授与されたダイソンは、掃除機やハンドドライヤー、扇風機といった家電製品を革新的なテクノロジーで刷新し、自身が創業した企業を、世界85の国と地域に広げたことで知られている。保有資産が153億ドル(約2兆2200円)と推定される彼は、フォーブスのリアルタイム・ビリオネアランキングで英国で3番目の富豪となっている。ダイソンの今日の成功は、粘り強さと熱意に満ちた起業家精神によってもたらされた。
ダイソンが1982年に世界で初めて世に送り出したサイクロン式掃除機は、何千時間もの時間をかけて5127個もの試作品を手作業で製作した後に生まれたものだった。そして今、彼は「英国はもはや、未来のダイソンを生み出すための熱意を失ったのではないか」と危機感を抱いているという。
英国では昨年7月誕生した労働党政権が、400億ポンド(約7兆8400億円)以上の増税を行い、国民保険料の雇用主負担を引き上げる雇用法の改革にも着手した。その結果、多くの経済団体が雇用の減少や物価の上昇を招くと警告している。
ダイソンは今年1月、相続税の引き上げによって多くの家族経営のビジネスや農場が破綻するだろうと警告したが、今回のコラムでもその主張を繰り返した。
「労働党は国を破壊しようとしている。富や雇用を生み出そうとする者や食料を育てる者たちは、みな罰せられる。彼らは挑戦しようとする者に敵意を抱き、憎んでいる」と彼は述べている。
これに対し、財務省の報道官は次のように反論した。「われわれはビジネス重視の政府だ。経済活動は過去最高水準にあり、政権の発足以来、雇用は50万人増加した。また、最も規模が小さな事業者らを雇用主負担の国民保険料引き上げの対象外とし、小売業、観光業、レジャー業に属する約25万件の事業用不動産に対する事業用資産税の全額支払いを免除している。さらに、法人税率をG7諸国で最も低い水準の25%に抑えている」
昨年10月以降に約28万人の雇用が減少
財務省の報道官はまた、昨年10月の増税措置について「NHS(国民医療制度)を含む公的財政の安定化に向けた必要な取り組みであり、NHSでは待機者数が5カ月連続で減少している」と説明した。さらに、企業支援に関しては「成長や輸出、新市場への参入に必要な資金へのアクセスを促すため、企業が競争力を発揮できるよう機会の創出に注力している」と主張した。
英国立統計局(ONS)が12日に発表した2025年2月から4月までの3カ月間の国内総生産(GDP)は、前期比で0.7%成長した。しかし4月の単月のGDPは、雇用関連の税負担の引き上げやトランプ政権による追加関税の発動の影響で、前月から0.3%縮小した。
またONSは、5月の給与所得者数が前月から10万9000人減少し、過去4年間で最大の減少幅となったと発表した。英国では昨年10月の予算発表以降に、累計27万6000人の雇用が失われたとされている。



