日本企業「漂流」を防ぐ モノ言う社外取締役が必要だ

一連の「東証改革」が発する社外取締役の本分とは。時代を先取りしてユニクロの「強さ」を言い当て、30年来にわたり「資本コスト経営」を重視し続ける阿部修平スパークス・アセット・マネジメント代表と考える。


藤吉雅春(Forbes JAPAN編集長):今年2月に東証(東京証券取引所)が発表したレポート「親子上場等に関する投資者の目線」は、親子上場解消への議論を促すものとして注目をされました。実際に、豊田自動織機やNTTなど、親子上場解消へ具体的な動きを見せる企業も出てきています。スパークス・アセット・マネジメントで運用調査本部長を務められている平野さんも交えながら、一連の「東証改革」について考えてみたいと思います。

平野:親子上場解消の議論については、やはり資本コスト経営やROEを意識せよという東証のメッセージを強く感じます。日本でもこの10年ほどで資本コストとかROEについての議論が活発に行われるようになりましたが、なぜこれまで議論にならなかったかというと〝文句を言う株主〟がいなかったからなんですね。

つまり昔は株の持合いなどを通じて「安定株主」が企業の株式を所有しているケースが多かった。親子上場の形態もその例の一つです。それが持合いが解消されて、株式所有の民主化が進む過程で、アメリカのように資本コストとかROEを意識する流れが生じてきたわけです。

藤吉:なるほど。

平野:スパークスでは20年前から資本コストのことを指摘していましたが、当時の企業経営者にとって一番のステークホルダーって例えば銀行だったんですよね。安定株主として株を持ち合っていて、経営のことにはお互いにあまり口を出さないのがジェントルマンルールだよね、という状況だったわけです。

阿部:かつては株の持合いってすごく意味があったんですよ。戦後日本の高度成長期において、銀行は総合的な資金の出し手で、貸出しもするし、グループ関係を強化するために株の一部も持つ。

間接金融で企業のガバナンスを銀行がやって、経済成長のトレンドを作っていたともいえます。だから最盛期には銀行が日本の株式市場の約3割を所有していたんです。ところがバブルが崩壊して、銀行は株を持つ力を失って、これを全部売った。それがどこに行ったかといえば、その3割がきれいに外国人に移った。

藤吉:なるほど。だから、資本コストとかROEとか欧米の指標を重視する声が大きくなってきたんですね。

阿部:そういうことです。で、今は外国人以外に日本人の個人が10%程度所有しているんですけど、下手をするとこの10%も海外に流出してしまう恐れがあると僕は思ってます。それだけ日本の株が今、安すぎるんですよね。

藤吉:外国人が日本株の40%保有することになると、経営上の拒否権を発動できる33.3%を超えるという言い方もできますよね。

阿部:そうなってもおかしくない。ただ日本にお金がないかというと、個人金融資産が2100兆円ある。その内1200兆円が銀行に預金されていますが、これが今後、株へと動く可能性がある。

これまで個人が株を買おうと思わなかったのはデフレだったからですよ。デフレのときは株を買わずに現金で持っておく方が合理的ですよね。

これは僕の持論なんですが、「個人は短期的には間違うことはあっても、個人の集合体であるマス(大衆)は長期的には最良の判断をする」。今後、株価が上がり始めたら、この1200兆円が動くと僕は見ています。

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text by Hidenori Ito/ photograph by Kei Onaka

連載

市場の波に乗る12の視点 スパークス代表・阿部修平×Forbes JAPAN 編集長・藤吉雅春

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