狙われる日本企業
藤吉:実際に日本のセブン・イレブンが狙われました。
阿部:あそこは、日本のセブン&アイホールディングスが、アメリカの本家のセブン・イレブン(7Eleven, Inc.)を買収して完全子会社化した形になっているんですね。
で、アメリカの方を、新規上場する方針を出していて、その時価総額は親会社のセブン&アイよりも大きいと言われている。〝お宝〟を抱えているセブン&アイの時価総額が5兆6000億円というのは、海外投資家からすれば割安ということになるんです。
藤吉:そういう危機意識は日本側にありませんでしたね。
阿部:でもこれからは、そういうリスクが常にある。異常な状況を放置しておくと、必ず狙われる時代になったということが、セブン・イレブンのケースで白日のもとに晒された。
日本の政府とか政治家は、まるでタブーのように株価のことは口にしないですが、それだと「株価は絶対に上がるから心配しなくていい」というトランプ政権には対抗できないよね。トランプが発言したことがすべて実行できるとは思いませんが、それでも彼の発言は常に市場の反応を意識して周到に準備されている印象を受けます。
藤吉:東証のROEを上げましょう、資本コストを意識しましょうという改革は、ある意味では日本企業が割安で放置されている状態を改善しようという意味もありますね。
阿部:そう思います。我々がやっているエンゲージメント活動というのも、安く放置されている状態の理由を説明し、それを改善してもらう。こことここを改善すればあと2秒は速く走れますということを株主提案で経営陣に提示するわけです。
けれど企業側が危機意識を共有してくれないと〝水掛け論〟になってしまう。日本の優良企業が生み出す付加価値がすべて海外に流出するという事態にならないよう、今こそ日本の投資家が魅力的で割安な企業への投資を進めて、日本発の価値創造を日本の投資家に還元していくときだと思います。
そのために必要なのは、資本コスト経営を正しく理解した社外取締役と、モノを言える株主なのではないでしょうか。

平野哲也 スパークス・アセット・マネジメント株式会社 運用調査本部長
1996年、⽇興證券投資信託委託株式会社(現⽇興アセットマネジメント株式会社)に⼊社。欧州株式、⽇本株式の運⽤に携わった後、ミシガン⼤学にてMBAを取得。2006年、スパークス・アセット・マネジメント株式会社に⼊社。入社以降、中小型株式を中心とした集中投資戦略に従事。
2009年よりファンドマネージャー。企業経営者との対話も積極的に行い、株主の視点から企業価値向上への議論を促している。


