社外取締役の実態
藤吉:一方で近年、東証は社外取締役の導入を積極的に推進していて、「プライム市場の上場企業は取締役会の3分の1以上を社外取締役で構成すること」を求めています。これについてはどうご覧になっていますか?
平野:まず社外取締役の根源的な価値が、その企業の長期的な企業価値を高めることにあることは誰も異論はないと思います。
その役割は大きく2つあって、ひとつは財務的側面から株主の視点を持つこと、もうひとつは具体的オペレーションの部分で貢献することだと思います。アメリカでは特に後者の役割を期待して、社外取締役に企業経営経験者を入れることが多い。
対して日本では従来、大学教授だとか弁護士、会計士など形式要件が重視されることが多かったんですが、今後は財務とオペレーションの両面で企業価値に貢献する役割が求められるんじゃないかなと思います。
阿部:社外取締役としての要件を満たす人財を探すのは、実際本当に難しいのです。その結果、限られた人たちが社外取締役を何社か掛け持ちする事になってしまう、というケースが増えていると思います。
だから今こそ社外取締役に会社として期待するパフォーマンスについて総合的に考えるべき時がきているとは思います。
株価低迷は経営者失格
藤吉:こうして見ると、一連の東証改革というのは、日本企業が安易に買われて漂流してしまうような危機を防ぎ、日本経済の成長を妨げる要因になってしまっていた慣習とか体質的なものを変えていこうということなのでしょうか。
平野:そうですね。単に外国人投資家にアピールして売買高を増やそうというレベルの話ではなくて、もう少し壮大な哲学に基づいて動いているように私も思います。日本のためにパブリックな器としての東証の在り方を考えているように感じます。
藤吉:東証のレポートを読んでいると、いいこと書いてあるなと腑に落ちるんですよね。
平野:そうですよね。ただあれを読んで、経営者の方でも「ROEが高かったら、何か自分にメリットがあるの?」という方が意外と多いんですよね。
藤吉:前回の「資本コストの意識の低さ」という話と繋がりますね。
平野:そうですね。アメリカだと株価が低迷しているというだけで経営者のクビを切る理由になることもあります。「株価が低迷しているのは、経営者の能力が低くて利益が資本コストを上回っていないからだ」という理屈ですね。それはそれで極端ですけど。
阿部:アメリカでは市場が最上位の概念だからね。もっともアメリカはそれが行き過ぎて、今、トランプが出てきた。
藤吉:改革の方向性としては間違ってないけど、どこかで折衷案的な調整は必要になるのかもしれませんね。


