資本コスト経営から東証改革の「謎」を解く

上場だけが目的になってしまうことの問題

阿部:時価総額が小さかろうと、とにかく上場することを目的としている経営者が多いのも事実です。

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藤吉:上場自体が目的化してしまうのは日本経済の風潮なんでしょうか。

阿部:とくに創業経営者に多いんですが、上場をひとつのステータスと見做しているんでしょうね。けれど上場企業というのは、すべてのステークホルダー、つまり顧客であり、従業員であり、銀行であり、株主であり、という人たちに対して責任を負っているわけです。それを果たしていない会社は上場をやめます、というのは僕はアリだと思う。

一方で小さな会社が多いのには、日本はこの30年ずっとデフレだったという背景もあるんですよね。デフレ下で成長するのは難しい。これは最近のコメ問題にも通じる話なんですけど、デフレが長く続いたあまり、日本人は「価格」というものへのリスペクトが薄くなったように思います。

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30年以上、コメの値段が上がってなかったということ自体、農家の持続可能性を考えたら本来ありえない話だし、実際、やめちゃった農家さんも多いわけです。テレビの情報番組でも何かというと「また値上げ」と騒ぎますが、コメに限らず、世の中のあらゆる商品は適正な値段で売られることで、企業は利益をあげて成長していけるということをちゃんと考えた方がいい。

藤吉:それこそ十分なROEを上げる機会を逸してしまったんですね。

阿部:やっぱりそこは検証しないといけない。日本の政府とか金融当局はゼロ金利とか政策で市場をコントロールしようとしてきました。政策による過度な介入は間違いだと僕は思う。バブルを生んだのもプラザ合意で円高になったのも政策によって景気を浮揚させようとしてだし、その加熱を今度は収束させようとしてバブルがはじけて、資本主義史上、例をみない長期のデフレを招いたわけですから。 

 

平野哲也 スパークス・アセット・マネジメント株式会社 運用調査本部長

1996年、⽇興證券投資信託委託株式会社(現⽇興アセットマネジメント株式会社)に⼊社。欧州株式、⽇本株式の運⽤に携わった後、ミシガン⼤学にてMBAを取得。2006年、スパークス・アセット・マネジメント株式会社に⼊社。入社以降、中小型株式を中心とした集中投資戦略に従事。

2009年よりファンドマネージャー。企業経営者との対話も積極的に行い、株主の視点から企業価値向上への議論を促している。

text by Hidenori Ito/ photograph by Kei Onaka

連載

市場の波に乗る12の視点 スパークス代表・阿部修平×Forbes JAPAN 編集長・藤吉雅春

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