資本コスト経営から東証改革の「謎」を解く

「資本コスト」とは何か?

平野:資本コストって直感的にわかりにくいんですけど、例えばスーパーで牛乳がタダで売っていたとしますよね。すると「本当は1本あればいいけど、タダなら2本もっていっちゃおう」となりがちですよね。一見トクしたように見えるんですが、本当に必要な量が1本だったとしたら、余分なものを抱え込んじゃったともいえます。

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これを会社経営に置き換えると、経営に直接使わない余分なキャッシュだとか不動産を膨大に抱えているケースと同じです。日本の会社ではこういうケースが多いんですが、本当は必要最低限の資本で効率的に経営するのが「いい経営者」なんですよね。

阿部:日本の経営者も、「銀行から借りた資本にはコストがある」というのはわかるんです。金利があるから。でも資本金には金利がないからタダだと思ってる人もいる。

藤吉:遊んでいる資本があったとしても、タダなんだから構わないじゃないか、という理屈ですよね。 

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阿部:そう。けれど本当はそうじゃないんです。資本コストを意識しない経営をすると、さっきの牛乳じゃないけど、その会社に損は出なくても、その分のコストを社会が背負うことになるんです。

藤吉:社会がコストを負うことになるというのは、どういうことでしょう。

平野:例えば企業に遊んでいる1兆円のキャッシュがあったとしたら、これを株主に還元すれば、その1兆円は違う形で活かされた、社会に還元されたといえますよね。

ところがこの1兆円を何もせずにため込んでしまったら、社会には何のプラスにもならない。これは社会にとっての損失になります。つまり資本のコストを社会が背負うことになります。

藤吉:なるほど。

平野:第二次大戦以降、日本企業はこの資本コストの意識が希薄なままずっときてしまって、東証の平均PBRが1倍割れ、つまり株価が企業の1株当たり純資産よりも低い状態が常態化してしまった。

いわば「その会社は解散してしまったほうが、株主のためになる」という状態です。経営者がもっと資本コストを意識していれば、日本の経済は活性化されて、国民は豊かになっていたはずなんですね。

東証の打ち出したメッセージ「資本コストや株価を意識した経営」は、この資本コストの考え方を日本の経営者に定着させようという方向性のもので、我々としては歓迎すべきものと捉えています。

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text by Hidenori Ito/ photograph by Kei Onaka

連載

市場の波に乗る12の視点 スパークス代表・阿部修平×Forbes JAPAN 編集長・藤吉雅春

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