ガチ中華には白酒を!
茅台酒は中国を代表する高級白酒として、政府の外交の場でも頻繁に用いられてきた。現在はアジアやヨーロッパ、アメリカ、オセアニア、アフリカなどの64の国と地域で販売されている。
ところが、日本ではその名は知られていても、茅台酒をはじめとした白酒を実際に飲んだことのある人はそれほど多くないかもしれない。
その理由は、アルコール度数の高さにありそうだ。日本では同じ蒸留酒の焼酎は20度から25度が主流で、酎ハイなどにして炭酸で割って飲むことが多いが、白酒は30度から60度もある。白酒の1つである茅台酒も53度が標準だ。
これまでガチ中華を広く知ってもらおうと活動してきた筆者は、多くの人に白酒も飲んでもらいたいという思いがある。白酒は長期熟成させている酒なので、実は香りが豊潤で口当たりもまろやかなため、ガチ中華に合うからだ。
中国パビリオンの会場で会った茅台酒日本輸入総代理店の「日和商事」の郭斌広報部長も「ガチ中華には白酒を!」と薦める。
北京出身の郭部長が言うには、「ガチ中華に白酒が合う理由は、中華料理に多い油分を白酒の強い香りとアルコールが洗い流し、後味をさっぱりさせてくれること。ガチ中華を代表する四川料理や東北料理などは味が濃く、香辛料を多く使うため、白酒のような強い酒でないと料理に押されてしまうから」だという。
中華料理店でたまに羊料理や四川料理と一緒に紹興酒を飲んでいる人を見かけるが、これほど料理と合わない組み合わせはないのになあと思ってしまう。なぜなら、紹興酒は中国の長江下流域の江南地方の醸造酒であって、少なくとも中国の人たちは北方や内陸の料理と一緒に飲む人などいないからだ。その点、日本人は中国酒に関する理解が十分ではないと思う。
筆者もふだんはめったに口にすることはないが、ガツンと刺激の強い四川料理や麻辣火鍋などと白酒を一緒に飲むと、ほんのりした甘さが舌を休ませてくれる。白酒の面白いところは、最初にグラスを口に寄せると、強いアルコール臭を感じるのに、飲み進めていくうちに、だんだんまろやかさと甘みが口中に広がっていく、その変わりようにある。
多様な調味料を使うガチ中華だからこそ、白酒との相性は抜群だと気づくはずだ。せっかく本場の味を求めてガチ中華を食べるのだから、お酒もガチな白酒にするほうがいいに決まっているではないか。


