6月上旬、大阪・関西万博の中国パビリオンで「貴州茅台、世界と共に110年(貴州茅台、与世界110年)」と題されたイベントが開催された。同パビリオンでは日替わりでさまざまなテーマのイベントが行われているが、その日は貴州省の銘酒である茅台酒をテーマとした「茅台テーマデー」が催されていた。
茅台酒は、中国では「白酒(バイジゥ)」と呼ばれるアルコール度数の高い蒸留酒の一銘柄だ。質の高い高粱(コーリャン)や小麦、水といった原料からつくられ、色が透明なことから「白酒」と呼ばれている。スコッチウイスキーやコニャックブランデーとともに世界3大蒸留酒の1つである。
その最高峰とされる茅台酒が、初めて海外で知られる契機となったのは、1915年サンフランシスコで開催されたパナマ・太平洋万国博覧会だ。その後、時を経て2010年の上海万博ではスポンサーとして記念酒を発表。そして今回の中国パビリオンでは唯一の戦略的パートナーとして参加し「大阪万博記念バージョン」を発表した。
このパナマ・太平洋万国博覧会から始まる茅台酒にまつわる100年を超える歴史に関するストーリーが、この日の中国パビリオンでのイベント「貴州茅台、世界と共に110年」では語られたのだ。
「品質は生命」という信念を堅持
「貴州茅台、世界と共に110年」に登壇するため来日した「貴州茅台酒廠(集団)有限責任公司」の張徳芹董事長(CEO)は次のように話す。
「茅台は貴州省という中国の山間から成長した企業であり、『品質は生命』という信念を堅持し、厳格な生産管理システムと品質基準を守ってきた。われわれはこれまで万博というプラットフォームを通じて世界の優れた企業から学ぶ機会を得てきた。今回の日本訪問で、日本の品質管理や製造のきめ細やかさを学びたい」
張徳芹董事長は、1972年貴州省西北部に位置する仁懐市生まれ。そこはまさに茅台酒の産地であり、茅台酒はその地を流れる赤水河の水を使う。張董事長は貴州大学で発酵学を専攻した職人畑の人物でもある。
貴州茅台酒廠は、伝統的な酒造業の枠を超え、現代的な課題に対応するESG(環境=Environment、社会=Social、ガバナンス=Governance)を重んじる経営を掲げている。
生産工程で発生する廃棄物を最大限リサイクルするシステムを導入。地域社会との共生を重視し、農家と連携した有機コーリャン栽培を推進しているという。技術指導や資材提供を通じて農家の収入向上もサポートし、農村の生活水準向上に貢献しようとしている。
中国パビリオンの館内展示も面白かった。大阪・関西万博のテーマである「いのち輝く未来社会のデザイン」を強く意識したもので、茅台酒の展示では全長13メートルに及ぶ巨大なLEDスクリーンが設置され、茅台の産地である赤水河流域の気候風土や豊かな自然環境と1000年にわたり受け継がれてきた醸造の技法や職人魂を表現していた。
また中国パビリオン全体としても、中国各地の環境の豊かさを伝える趣向に富んだ展示は見ごたえのあるものだった。



