30U30

2025.06.27 13:30

【私が15歳だったころ】Shigekix、「自己表現」の深化に宿る意味

半井重幸(Shigekix)|ブレイクダンサー

半井重幸(Shigekix)|ブレイクダンサー

2025年6月25日発売のForbes JAPAN8月号は「10代と問う『生きる』『働く』『学ぶ』」特集。創刊以来、初めて10代に向けた特集を企画した。背景にあるのは、10代をエンパワーメントしたいという思いと、次世代を担う10代とともに「未来社会」について問い直していくことの重要性だ。「トランプ2.0」時代へと移行した歴史的転換点でもある今、「私たちはどう生きるのか」「どのような経済社会をつくっていくのか」という問いについて、10代と新連結し、対話・議論しながら、「新しいビジョン」を立ち上げていければと考えている。

特集では、ドワンゴ顧問の川上量生、 軽井沢風越学園理事長の本城慎之介、 神山まるごと高専理事長の寺田親弘による表紙座談会をはじめ、世界を変える30歳未満30人に注目した「30 UNDER 30」特集との連動企画「15歳のころ」には、ちゃんみな、Shigekix、ヘラルボニー松田崇弥、文登、Floraアンナ・クレシェンコといった過去受賞者が登場。そのほか、ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長の柳井正、前台湾デジタル発展相大臣のオードリー・タンへの10代に向けたスペシャルインタビューも掲載している。

「Forbes JAPAN 30 UNDER 30」連動企画、受賞者たちの「15歳のころ」。世界的ブレイクダンサーのShigekixは当時をこう振り返る──。


人生には「ターニングポイント」というものがある。ある出来事が、自分の人生を大きく左右する。誰の人生にも訪れるものだが、いつ、どのように起こるのかは人それぞれで、成人前に遭遇することも、老齢になってから直面することもある。

日本を代表するブレイクダンサーのShigekixにとって、そのタイミングは15歳だった。今から7年前、若手の注目ダンサーだった少年は、ブレイキンで生きていく決断をした。世界最高峰のトーナメント、Red Bull BC One World Finalに、最年少で挑んだ。

「5人の審査員が1人ずつ、勝ったと思うダンサーのネームプレートを掲げるんです。初めて足を踏み入れたトップの世界、自分の名前が1枚でも上がれば上出来だと思っていました」

ベスト16から始まったトーナメントを勝ち上がり、準決勝まで進んだ。自分でも予想外の、充実感のある結果だった。その時、世界で戦える自信と、険しい道を歩む覚悟が芽生えた。しかし、ダンスで生きていくのは茨の道だ。ほかの可能性を閉ざし、15歳でその道を選ぶリスクも大きい。それでも決断したのは、世界のトップ4に残った自分への責任感からだった。

「もし自分が道を切り開かなければ、日本のブレイキンシーンは遅れる。そう言い聞かせて、前に進みました」

ステージ上でダイナミックに踊る現在の姿からは想像しにくいが、Shigekixはかつて、内向的な少年だった。家に帰ればスケッチブックの前に座り、クレヨンを握って絵を描くことが好きだった。赤ちゃんの時もほとんど泣かず、言葉を覚えてからも口数が少なかった。本人は当時を、「いつも、答えの出ないことばかり考えていた」と振り返る。

「5歳、6歳の時、自分は何者なんだろう、なんで今、ここにいるんだろうというようなことが、頭のなかをグルグル回っていました」

蓄積された疑問は、スケッチブックの上で吐き出された。言葉にできない思いは自己表現として、クレヨンの線に置き換えられていた。

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文=泉 秀一 写真=安島晋作

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