ビットコインの価格が10万ドル(約1450万円)を超えて上昇を続ける中、数多くの企業がSPAC(特別買収目的会社)やリバース・マージャー(逆さ合併)を通じて株式市場から資金を調達して、大量のデジタル資産を購入している。
ビットコインを含むデジタル資産の取得に特化した上場企業は、「暗号資産トレジャリー企業」と呼ばれ、注目のトレンドの一つとなっているが、そこには理由がある。これらの企業は既存の上場企業との合併を進め、猛烈なスピードでトークンを買い集めることで、機関投資家や個人投資家が、ハッキングのリスクがある取引所やウォレットを使わずに、デジタル資産に投資できる機会を提供している。
この分野の先駆けであるビリオネアのマイケル・セイラーが創業したマイクロストラテジー(現在は「ストラテジー」に改称)は、今もなお主要なプレイヤーで在り続けている。現状で世界70社以上の上場企業が、総額670億ドル(約9兆7200億円)相当を超えるビットコインを保有している。そして、この分野全体の資本投下のスピードは、目を見張るものがある。
カリフォルニア州パロアルトの金融アドバイザリー企業、アーキテクト・パートナーズのエリオット・チュンによると、4月以降に30社以上の上場企業が同様の戦略を発表しており、総額190億ドル(約2兆7600億円)の資金調達を目指しているという。
つい先週も、トランプ米大統領のSNS、トゥルースソーシャル運営元の「トランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループ(TMTG)」が、ビットコインの購入に向けて株式と転換社債の売却により23億ドル(約3340億円)を調達したと発表した。また16日には、トランプ一族の暗号資産事業の主要な支援者であるビリオネアのジャスティン・サンが、自身のデジタル資産プラットフォームの「トロン」を、ナスダック上場のSRMエンターテインメントとの逆さ合併を通じて米国で上場させる計画を発表した。この取引の一環として、トロンは最大2億1000万ドル(約300億円)相当の自社トークンを新会社に注入するという。
日本のメタプラネットも株価急騰
これらの実績の乏しい企業の株価は、軒並み急騰している。商業不動産融資プラットフォームのJanover(ジャノーバー)の株価は、4月に暗号資産ソラナ(SOL)を中心とした戦略を採用して「DeFiディベロップメント・コーポレーション」に改称して以降に、5300%以上も上昇した。ホテルチェーンから暗号資産保有企業に転身した日本のメタプラネットの株価も、年初来で472%の上昇を記録している。また、セイラーのストラテジー社の株価は、年初来で30%高で、過去5年間では3000%を超える上昇となっている。
これらの「暗号資産の新参者」の大半は、単に暗号資産を取り巻く投資家の熱狂に便乗しているにすぎないが、今では米国政府もこの業界を全面的に受け入れつつあるように見える。さらに、レバレッジの効果も株価を押し上げる要因となっている。これらの企業のほとんどは、ストラテジー社と同様に転換社債や株式の発行によって資金を調達し、暗号資産を購入している。



