音楽家・小林武史が東京ドームで挑んだ「カーボンニュートラルなフェス」

「ap bank fes '25 at TOKYO DOME 〜社会と暮らしと音楽と〜」©ap bank

「ap bank fes '25 at TOKYO DOME 〜社会と暮らしと音楽と〜」©ap bank

「持続可能な未来への想いを実現させるために」

音楽家の小林武史が、Mr.Childrenの桜井和寿、そして坂本龍一とともに一般社団法人APバンクを設立したのは2003年のこと。サステナブルな未来をつくるために音楽にできることは何か──。彼らが出した答えのひとつが、気持ちのよい場所で音楽を聴きながら、環境問題を身近に考えてもらうことを目的とした野外音楽イベント「ap bank fes」だ。

ap bank fesは、さまざまな取り組みの「実践の場」でもある。環境にも体にもやさしいフードを提供し、環境に配慮したグッズを販売。環境負荷の少ないエネルギーの部分的な導入や、ゴミの削減と分別回収も徹底して行ってきた。

こうした環境に配慮した取り組みは、いまや世界中の音楽ライブやフェスで常識となりつつある。音楽業界の行動変容に大きな影響を与えたのは、英ロックバンドのコールドプレイだ。大規模な音楽イベントには、多くの環境負荷が伴う。観客やスタッフの移動によるCO2排出、フードロス、ゴミ問題──。コールドプレイは2019年、環境負荷を懸念し、ツアーの実施を見送るという決断を下した。

しかし、単に「やめる」のではなく、環境負荷を抑えながらライブを実施する方法を模索する流れも加速している。

2024年にオランダ・アムステルダムで開催された、約5万人が集まるエレクトロニック音楽フェス『DGTL(デジタル)』もそのひとつ。「家で寝て過ごすよりサステナブル」をテーマに、再生可能エネルギーの使用やヴィーガン食への切り替えを実施した。

日本でも、フジロックフェスティバルでは、ゴミステーションで分別を促すボランティアスタッフが常駐していたり、森林保全のための間伐プロジェクトを実施したりするなど、持続可能なイベント運営を進めている。さらに、排出されるCO2を地元の電力会社と協力して再生可能エネルギーで実質ゼロにする公演など、新たな取り組みも広がってきている。

そんななか、今年2月、「ap bank fes '25」が東京ドームを会場に開催された。imase、スガシカオ、B’z、槇原敬之、東京スカパラダイスオーケストラ、Mr.Childrenらが出演。小林武史と櫻井和寿を中心に結成されたBank Bandとゲストミュージシャンの共演と、バンドアクトで構成された2日間〜で、実に8万8000人の観客を動員した。

今年2月15・16日、東京ドームのステージに登場した小林武史 ©ap bank
今年2月15・16日、東京ドームのステージに登場した小林武史 ©ap bank

ap bank fesは、初回の2005年から「グリーン証明書」を利用したカーボンオフセットを導入してきたが、開催14回目を迎えた今年は、CO2排出量の見える化を通じた「カーボンニュートラル公演」を実現させた。

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