TOEICや英検などの英語の検定試験で高得点を取れと会社に命じられ、必死に試験勉強をする人は少なくない。だが、試験ではヤマが外れたり、時間が足りなかったりといろいろな「障害」に邪魔される。そんな苦労はもうなくなるかもしれない。脳波を測るだけでその人の英語(第二外国語)のレベルがわかるとしたら、こんなに楽なことはない。
語学教育関連企業の進鳳堂と大阪大学は共同で「英語学習時の脳波(EEG)データを活用し、学習者の英語習熟度を非侵襲的かつ迅速に評価する新たな手法」の研究を行っているが、同研究成果を記した論文『Identifying english proficiency by frontal theta activity during english learning』(英語学習中の前頭葉シータ活動による英語能力の特定)がSpringer Natureの国際オンラインジャーナル「Discover Education」に掲載された。脳の前頭部で検出されるシータ帯域の脳波を測定することで、その人の英語の習熟度がわかるということだ。
研究チームは、英語の初級者(TOEIC730点未満)と上級者(730点以上)に英会話の教材動画を見てもらい、見る前、見ている間、見た後の脳波を測定する実験を行った。すると上級者は、見ている間の前頭部シータ帯域の活動が大幅に高まった。これは初級者よりも集中力が高い証拠だ。つまり、英語の習熟度と脳波活動との相関が示唆されたということだ。
もちろん、これだけでは英語の能力を測ることはできない。今後の課題として、たとえばTOEICの点数が上がるごとに前頭部シータ帯域の活動量も段階的に増えるのか、いろいろな学習コンテンツでも同じ結果が得られるかなどを検証する必要があると論文で述べられている。
もし、脳波測定で英語力が客観的に測れるようになれば、英語力を高めるというよりは、高得点のための受験テクニックを磨くといったナンセンスな努力に時間を割く必要がなくなる。まあ、この客観的な測定で、猛勉強の末に獲得したTOEICの得点より下に評価されるなんてこともあり得るが。TOEIC800点以上でも英語が話せない人がたくさんいるから、笑い話では済まなくなるかも。



