Forbes JAPANが2019年に始めた「RISING STAR」プロジェクトでは、創業3年目以内のスタートアップ起業家を応援してきた。今、創業期のスタートアップシーンは潮目が変わりつつある。多様なプレイヤーが参入するとともに、数百億円規模の資金を調達する起業家も登場。次世代のユニコーン企業たちの層が厚くなっている。
創業3年目以内の起業家に光をあてる「RISING STAR」プロジェクトは7度目を迎えた。創業期の起業家は多様化し、実力をもったプレイヤーも台頭してきている。
日本の創業期のスタートアップ起業家に進化と多様化が起きている。政府のスタートアップ育成5カ年計画の推進などに伴って起業家の母数が増えるとともに、比較的低コストで事業を始められるソフトウェア系だけでなく、大学発の研究成果を社会実装するディープテックや、社会性と収益性の両立を目指すインパクト起業家、さらには連続起業家などさまざまなプレイヤーが参入。特にこの2年ほどでは、起業家の属性の広がりに加えて、これまで創業期のスタートアップでは見られなかった高い資金力を携えた企業も出てきている。
象徴的なのは、スタートアップなどのビジネスの世界で実績や信頼を積み重ねてきた実力者による資金調達の大型化だ。例えば、生成AIの開発企業であるSakana AI。グーグル出身の著名なAI研究者であるデイビッド・ハ、同社出身でAI開発の基礎となる論文の共同執筆者ライオン・ジョーンズ、外務省出身でメルカリ執行役員を務めた伊藤錬が2023年に共同創業した同社は、24年9月にエヌビディアや米有力ベンチャーキャピタルのニュー・エンタープライズ・アソシエイツ、コースラ・ベンチャーズ、ラックス・キャピタルなどから約300億円を調達し、日本最速でユニコーン企業(評価額が10億ドル以上の未上場スタートアップ)に。メルカリの日本事業を統括していた青柳直樹が24年に創業し、タクシー・ライドシェア事業を展開するnewmoも、創業1年目で累計187億円を調達した。スピーダ スタートアップ情報リサーチの調査によると、この2社は、24年の資金調達ランキングの1位と2位にランクインしており、スタートアップ全体でも大きな存在感を放つ 。
足元では、プラスチックを燃料にした宇宙機用エンジンを開発・製造するLetaraがシードで11.3億円、光量子コンピュータの開発を行うOptQCは6.5億円、縦型ショートコンテンツを制作・配信するFLASHは5億円を調達。シード期のスタートアップの資金調達は、その多くが数千万円から1億円ほどだが、それを大きく上回る金額を集める事例がでてきている。
また、同調査によると、24年の会社設立3年未満の調達額中央値は、過去10年で最高水準になっている。その一方で調達社数はここ数年の半分近くに減少しており、優良なスタートアップに資金が集まる傾向が強くなってきている。



