ディープテックで生まれる好循環
もうひとつ、創業期のスタートアップという点で見逃せないのが、ディープテック企業の存在感の高まりだ。Angel Bridge代表パートナーの河西佑太郎は、ディープテック企業を取り巻く環境についてこう話す。「政府によるSBIR制度(旧:中小企業技術革新制度)をはじめとした支援はもちろん、IPOや資金調達に成功した事例が目立つようになったことで、自分もやろうという研究者が増えている」。この1年では、スペースデブリ除去サービスのアストロスケールホールディングス(24年6月上場)やiPS細胞を使った心臓再生医療のHeartseed(24年7月上場)が東証グロース市場に上場。先行者を追って後に続くという機運が高まっている。SBIインベストメント執行役員投資部長の松本祐典は、「特に大学教授や医師が会社を立ち上げる数が増えた。慶應義塾大学医学部では、スタートアップをつくることをテーマとした勉強会が開かれている」といい、新たな起業家が生まれるサイクルが回り始めている。

RISING STAR AWARDの過去受賞者たちも躍動している。医療業務のITサービスを提供するLinc'wellやCO2排出量の管理システムを提供するアスエネは、すでに累計で100億円を超える資金調達を行っている。特にアスエネは24年8月以降に半年で3社を買収するなど、急速に事業を拡大。海外展開も積極化していくという。
2019年にスタートし、今年で7度目を迎えたRISING STARイベント。恵比寿ガーデンプレイス内/The Garden Roomには、200名以上のスタートアップ関係者が集まり、ピッチやトークセッションを観覧したり交流をしたりと、終始にぎわいを見せた。日本の未来を牽引する「希望の星」たちは、着実に前進している。



