RISING STAR

2025.06.25 14:30

外国人起業家出現に100億円超調達 シードスタートアップの新潮流

イラストレーション = レイ・オレンジズ

外国人起業家参入の兆し

新たな潮流として注目したいのが、Sakana AIのような日本人と外国人による共同創業だ。日本やアジアなどのスタートアップに投資をしているHeadline Asia創業パートナーの田中章雄は「ここ2年ほど、東京で出会うスタートアップのなかで、日本人だけでなく外国人ファウンダーが入っているケースがすごく増えてきたと感じる」と話す。政府は25年1月に、起業をめざす外国人に向けた「起業ビザ」の対象を一部地域から全国に広げた。滞在に必要な、事業所の確保と事業規模の要件達成を猶予する期間も、従来の1年半から2年に拡大。一方米国ではドナルド・トランプ政権下で、外国人労働者の就労ビザ審査が厳格化している。「日本に外国人の起業家が流入するチャンスが来ている。海外と比べても物価も安く、生活環境という観点で考えても起業するのにいい国になっている」と田中は見る。

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このトレンドは、Forbes JAPANが開催している創業3年以内の起業家・経営陣によるピッチイベント「RISING STAR AWARD 2025」でも見て取れた。本イベントは公募からピッチ登壇者を選出しており、5年ほど前はエントリーする外国人起業家の割合は全体の1%程度だったが、今年は約8%に増えた。アワードを勝ち取った、商用電気自動車の導入支援を手がけるeMotion Fleetは、日本人の白木秀司とドイツ出身のデニス・イリッチによる共同創業で、国内だけでなく、タイやマレーシア、インドネシア、シンガポールなど、アジア市場の開拓も進めている。

国内スタートアップへの外国人起業家の参入は、目下、東京証券取引所が見直しを進めるグロース市場の上場維持基準に対応していくという意味でもポジティブな動きと言えるだろう。東証は、維持基準を現在の「上場してから10年後の時価総額が40億円以上」から「上場5年後の時価総額が100億円以上」に引き上げる見込みだ。IPOを志向するスタートアップは、今後より大きな事業の成長機会を求めていくことが必要になる。官民ファンドINCJ(旧:産業革新機構)執行役員ベンチャーグロース投資共同グループ長の大重信二は「起業した当初から海外マーケットを本気で狙うことが重要」と強調。そのうえで「外国人が入れば視野が広がり視座も上がる。自然とビジネスのつくり方も変わっていく」という。

さらに起業家だけでなく、投資家サイドにも外国人が増えていくことが望ましいと大重は考える。「INCJでは、外国人を積極的に採用していた。日本のスタートアップにグローバルで活躍してもらうには、海外ネットワークの紹介や海外での事業展開についてアドバイスできる人材が必要だ」

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文=露原直人 写真=大星直輝

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