起死回生の策、フードデリバリーに巨額投資
リウはその後、新たな収益源を模索する中でフードデリバリー事業への参入を決定し、2月に立ち上げた「JDテイクアウェイ」に1年間で100億元(約2000億円。1元=20円換算)の顧客獲得費用を投じると表明した。香港上場の美団(Meituan)や、アリババ傘下の餓了麼(Ele.me)を競合に見据えるJDテイクアウェイのプロモーションのために、リウは自らが配達員の制服を着て北京市内で電動バイクを走らせ、食事を届ける様子をイベントで披露した。
証券時報によれば、リウはフードデリバリー事業が京東の配達員の確保やサプライチェーンの強化を後押しし、主力のEコマースアプリの利用促進にもつながると考えている。調査会社ブルーロータス・キャピタル・アドバイザーズの5月14日付レポートによると京東のフードデリバリー事業は、立ち上げ後の数カ月で1日の配達件数が2000万件に達し、中国のフードデリバリー市場の7.5%を獲得した。
投資家は、価格競争の激化による利益率悪化を懸念
しかし、投資家はこの分野の価格競争の激化による利益率悪化を懸念しており、京東の香港上場株は年初から2.2%下落している。これは、同期間の香港ハンセン指数が年初来20%以上も上昇したのとは対照的だ。さらに、5月に中国の規制当局は、フードデリバリー業界の公正な競争を促すために京東や美団、餓了麼といった主要企業に公正な競争を要請した。
ブルーロータスは、京東が2025年に120億元(約2400億円)の損失をフードデリバリー関連で計上すると予想している。同社によると、京東は2030年までに中国のフードデリバリー市場の10%を獲得する可能性があるものの、それまでに累計の損失が460億元(約9200億円)に達する見通しとしている。
京東の2025年1〜3月期の売上高は、前年同期比16%増の3011億元(約6兆円)だった。また、純利益は政府の消費刺激策によって家電など特定商品の購入に補助金が交付されたことを受けて、前年同期比50%増の109億元(約2180億円)に上昇していた。


