アジア

2025.06.19 12:00

中国・京東の創業者リウが描く、巨額損失からのフードデリバリー逆転戦略

「京東集団(JD.com)」の創業者のリチャード・リウ(Photo by VCG/VCG via Getty Image)

「京東集団(JD.com)」の創業者のリチャード・リウ(Photo by VCG/VCG via Getty Image)

中国のEコマース大手「京東集団(JD.com)」創業者で、ビリオネアの劉強東(リチャード・リウ)は、自社の停滞を「失われた5年間」と表現し、競争が激化するフードデリバリー市場への進出とそれに伴う損失を正当化した。

私の起業家人生の中で最も革新性に欠け、進展も成長もない地味な時期

中国国営メディアの証券時報によると、京東の会長を務める現在51歳のリウが6月17日にこの発言を行ったが、どこで誰に対するものかは明らかになっていない。広報担当者は、フォーブスアジアに対しリウの発言内容を認めた。

「残念ながら、過去5年間のJD.comは何ひとつ新たな取り組みをしてこなかった。率直に言って、これは会社にとって失われた5年間だった。この期間は、私の起業家人生の中で最も革新性に欠け、進展も成長もない地味な時期だった」。

競合の猛追と政府の規制

純資産63億ドル(約9135億円。1ドル=145円換算)のリウは、2022年に京東のCEOの座を退いた。当時は、中国政府がインターネット業界に対する取り締まりを強化した時期で、2020年にはフィンテック大手のアント・グループが350億ドル(約5.1兆円)規模の新規株式公開(IPO)を中止していた。京東はその後の数年間で、海外市場向け格安サイト「Temu」(中国国内向けはPinduoduo)で知られるPDDホールディングスといった競合にEコマース市場のシェアを奪われた。PDD創業者の黄峥(コリン・ホアン)の保有資産は今やリウを大きく上回る361億ドル(約5.2兆円)に達している。

京東は、2023年5月には前CEOの徐雷(シュウ・レイ)が突如退任するといった波乱にも直面し、後任のCEOとしてリウに近い幹部の許冉(サンディ・シュー)が就任した。証券時報によると、リウは2023年末に会長の立場から経営への強い関与を再開した。

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編集=上田裕資

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