ロシアが犯した戦争犯罪
2022年にロシアがウクライナへの全面侵攻を開始して以来、ブチャでの処刑やマリウポリでの民間人の大量墓地、ヘルソンでの拷問所など、ロシア軍がウクライナ各地で行った悲惨な残虐行為の数々が報告されてきた。ノーベル平和賞を受賞したウクライナ人弁護士オクサナ・マトビーチュクは、これらの犯罪を記録し、国際的に正義を追求する上で極めて重要な役割を果たしている。マトビーチュク弁護士の研究は、ウクライナに関する国連人権報告書に裏付けられており、ロシアがジュネーブ条約と国際刑事裁判所に関するローマ規程を無視し続けていることを明らかにしている。ロシアがこうした残虐行為を続ける限り、同国をG7に復帰させることは外交的に時期尚早であるだけでなく、道義的屈服に等しいだろう。
それだけでなく、ロシアを復帰させれば、戦争の被害者に「正義は交渉次第だ」という残酷なメッセージを送ることにもなる。人権擁護と戦争犯罪の訴追を目的とする国際機構に対しては、すでに脆弱(ぜいじゃく)な信頼を傷つけることになる。また、法に基づく秩序を守ろうとする民主主義国家にとっては、説明責任と黙認の境界線が曖昧になる。
経済大国だが人権擁護の面では後進国の中国
中国をG7に加えるというトランプ大統領の提案は、参加国の懸念を一層高めることとなった。中国は国際社会で大きな影響力を行使している一方で、国内では異論を弾圧し、表現の自由を認めず、少数民族を疎外する一党独裁体制を取っている。これはG7の原則とは相反する統治体制に他ならない。
例えば、中国の病院では、法輪功の学習者から強制的に移植用臓器を摘出していたという疑惑があるが、これは複数の調査によって実証されている。2014年にカナダで制作されたドキュメンタリー映画がこれに関する詳細な証拠を公開したほか、2015年には中国の黄潔夫保健副大臣が死刑囚から臓器が摘出されたことを認めた。これにより、この慣行には終止符が打たれた。英ロンドンに拠点を置き、中国の強制的な臓器摘出を調査する民衆法廷は2019年、こうした慣行が「相当な規模で」行われていたと結論付けた。このような行為は国際法上のジェノサイド(集団殺害)であると各界で認識されており、民主的な説明責任に基づく場への中国の参加を巡り、倫理的に重大な問題を提起している。


