世界で最も住みやすい都市はどこだろうか? この疑問に答えるべく、英経済誌エコノミストの調査部門エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)は毎年「世界で最も住みやすい都市」をランキング形式で発表している。
2025年版では安定性、医療、文化と環境、教育、社会基盤の5つの項目にまたがる30の指標を用いて世界173都市を評価した。各都市は100点満点で評価される。
世界で最も住みやすい都市
今年は筆者が同ランキングの取材を始めた2022年以降初めて、オーストリアの首都ウィーンが首位の座から転落した。今年世界で最も住みやすい都市に選ばれたのは、デンマークの首都コペンハーゲンだった。EIUによると、コペンハーゲンは安定性、教育、社会基盤の3項目で100点満点を獲得。総合得点は98点で、97.1点のウィーンを上回った。コペンハーゲンは昨年と一昨年ともに2位につけていた。
ウィーンが首位の座を明け渡した理由は何だったのだろうか? EIUは、昨年から今年にかけて発生したテロ未遂事件により、安定性の評価が低下したと説明した。これらの事件には、昨年夏に予定されていた米歌手テイラー・スウィフトのコンサートを中止に追い込んだ爆破予告や、今年2月に発覚した市内の鉄道駅でのテロ未遂事件などが含まれる。今年、ウィーンはスイスのチューリヒと並ぶ2位となった。チューリヒは昨年3位、一昨年は6位だった。
西欧からは上位20位以内に8都市が入った。報告書の著者らは「西欧は5つの項目のうち4つで最高得点を獲得し、依然として住みやすさの点で最も優れた地域だ」と評価した。
アジア太平洋地域からも上位20位以内に9都市がランクインしており、好成績を収めた。他方で、アジアは地域間の格差が最も大きく、ランキングの上位と下位に大きく分かれた。アジア太平洋地域で最も住みやすい都市となったオーストラリアのメルボルンは4位だったが、同地域で最も住みにくい都市とされたバングラデシュの首都ダッカは171位だった。ダッカは昨年のバングラデシュの政治的混乱を受け、3位後退した。
ランキングの最下位はシリアの首都ダマスカスで、昨年に引き続き世界で最も住みにくい都市となった。EIUは、昨年の政権交代にもかかわらず、ダマスカスには長年の内戦による傷跡が残り、住みにくさは改善されていないと指摘した。



