AI

2025.06.19 11:30

AIを巡る米中の覇権争い、中国が有利だと言えるこれだけの理由

中国甘粛省で建設中の石炭火力発電所の冷却塔。2024年3月6日撮影(Costfoto/NurPhoto via Getty Images)

中国甘粛省で建設中の石炭火力発電所の冷却塔。2024年3月6日撮影(Costfoto/NurPhoto via Getty Images)

米コンサルティング大手マッキンゼー・アンド・カンパニーは、人工知能(AI)とそれを支えるデータセンターの能力を巡る米国と中国の新たな争いを「AIに電力を供給するための競争」と呼んでいる。一般的な予測では、AIは今後5~7年間で米国の電力需要を10~20%増加させると言われている。こうした状況について、電力業界のコンサルティングを手がける米パワー・ザ・フューチャー(PTF)を設立したダニエル・ターナー専務取締役は、1950年代~60年代にかけての米国とソビエト連邦の宇宙開発競争になぞらえ、「AIの開発競争は、次世代にわたる世界の超大国間の経済・国家安全保障上の最大の衝突となるだろう」と警告している。

AIとデータセンターの開発では米国が明らかに最先端の位置につけているが、中国は経済的、軍事的、そして国家安全保障上の理由から、これらの新技術を独自に開発し、世界的な覇権を拡大するという野心を示している。

AIは24時間365日、絶え間ない電力を必要とする技術だが、中国はデータセンターを運営するに足る安定的な電力を確保する計画を次々と打ち出している。一方の米国には、首尾一貫した継続的なエネルギー計画がない。中国の中央集権的な計画は長期的な発展を実現することもできるが、米国のエネルギー政策は4年ごとに変わる。米作家ロバート・ブライスが「中国は元素周期表の主要鉱物のうち約30種を独占的に保有しており、それぞれの市場占有率は平均で70%前後に上る」と指摘しているように、エネルギー計画では組織と展望が極めて重要だ。

中国は石炭火力発電への依存を再開した。2024年には94ギガワットを超える石炭火力発電所の建設が開始されたが、これは2015年以降最多となり、米国の既存石炭火力発電所の総発電容量の半分以上に相当する。米非営利団体グローバル・エネルギー・モニターによると、中国の石炭火力発電所の発電容量は、建設許可済みが58ギガワット、許可申請中が158ギガワット、建設中が204ギガワット、稼働中が1171ギガワットで、合計1591ギガワットとなっている。これは、欧州連合(EU)と日本を合わせた全発電量をも上回る。

ここで2つの点を強調する必要がある。(1)中国の石炭火力発電所は世界でも最先端で極めて効率的であるため、既存の石炭火力発電所も今後数十年にわたって稼働が可能だ。(2)中国で稼働中の大規模発電所の多くは、標準的な石炭火力発電所より二酸化炭素排出量が大幅に少ない。同国は先進的な石炭火力発電所の建設で主導的な立場にあり、世界で最も効率的な発電所を有している。

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翻訳・編集=安藤清香

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