これとは対照的に、米国は石炭火力発電を廃止しようとしているようだ。同国では2010年以降、300を超える石炭火力発電所が閉鎖され、石炭火力が米国の電力に占める割合は45%から現在は16%に縮小している。最も重要なことは、米エネルギー情報局(EIA)が4月に公表した2025年の「エネルギー見通し」で、石炭火力発電容量が35年までに現在の164ギガワットからわずか3ギガワットに激減すると予測されていることだ。つまり、米国の石炭火力発電はわずか10年で93%縮小することになる。同国は世界の石炭の約25~30%を保有しており、中国より多いことを考えると、これは実に愚かなことのように思える。
米国がデータセンター向けのベースロード電源(訳注:低費用で安定的に供給できる電源)の要求を満たすために新規原子力発電所に依存していると思われないよう、EIAのエネルギー見通しは、原子力発電の発電容量が2040年までに減少するとしている。
先述のターナー専務取締役が指摘するように、米国の原子力規制委員会は官僚主義的非効率の典型だ。米国では1990年以降、新規建設が許可された原子炉はわずか5件にとどまっており、実際に建設された原子炉はジョージア州のボーグル原子力発電所の2基のみだ。過去35年間にわたるこのような苦難の歴史を考えると、官僚主義的な過剰な障壁が即座に取り除かれない限り、今後20年間で原子力発電が大きく発展することは難しいだろう。一方、中国には現在58基の稼働可能な原子炉があり、その総発電容量は60ギガワットに及ぶ。現在、少なくとも30基、合計34ギガワットの原子炉が建設されている。AI競争での勝利に向け、中国は真剣勝負を挑んでいるのだ。
公正を期すために言及しておくと、EIAのエネルギー見通しは2040年までにかなりの発電容量が追加されると予測しているが、その大半は風力発電と太陽光発電によるものだ。これらの再生可能エネルギーは発電能力が断続的でベースロード電源にはなり得ないため、大容量のバックアップ電源を持たないデータセンターへの利用には向いていないことは明白だ。注意すべきことは、ここにも中国の壁が大きく立ちはだかっていることだ。同国は世界の風力タービン製造の60%、太陽光パネル製造の75%を占めている。
米国のドナルド・トランプ大統領が石炭と原子力の双方を推進しようとしていることは疑いの余地がないが、持続可能な計画という課題は依然として残っている。同大統領の任期は残りわずか3年半だ。中国では、ベースロード電源である石炭火力発電が次世代のデータセンターに対応しようとしている。
最後に、米国は風力と太陽光だけに頼るべきだと主張する人たちにはっきり言っておかなければならない。これはエネルギー安全保障上、明らかに危険な立場であり、真剣に受け止めることはできない。4月にスペインとポルトガルの全土を揺るがした大停電が、再生可能エネルギーの信頼性に疑問を投げかけていることはすでにご存じのとおりだ。


