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2025.06.19 10:15

欧州から描く「AI次章」──VivaTech 2025

2025年6月、パリで開催された欧州最大級のテクノロジーイベント「Viva Technology(以下VivaTech)」は、会期中に180000人の来場者、14000のスタートアップ、4000の出展企業、3600の投資家が集結した。AI(人工知能)を中心に、大企業やスタートアップ、そして投資家たちが次世代を見据えた展示やセッションを展開し、会場全体が「AIの未来を描く舞台」として熱気に包まれていた。

国別では「カントリー・オブ・ザ・イヤー」に選ばれたカナダが、建物の省エネ、量子セキュリティなど全部で30近くのスタートアップを紹介しており、すべてがAIスタートアップという点でも注目を集めた。

会場入り口近くには「AIアベニュー」があり、ここにはVivaTech主催者が世界各国から選出した9社のAIスタートアップが軒を連ね、最先端のソリューションを披露していた。たとえばフランスの「Bodyo」は血圧やコレステロール値を測定し病気を未然に防ぐ医療ロボット「Buddyo」を紹介。韓国の「Mand.ro」は、高品質で手頃な価格のロボット義手を開発・提供するスタートアップで、従来の義手の最大10分の1という価格で、誰もが経済的理由で義手を諦めることがない世界の実現を目指している。

日本からは「Ashirase」が選ばれし9社の一社として出展。靴に取り付けたデバイスが振動で進む方向を伝える視覚障害者向けナビゲーションシステムを披露した。Ashiraseは、VivaTech主催側から直接出展の打診を受けたスタートアップのひとつで、事前にビジネス内容やAI技術の活用について綿密なリサーチを受けたうえでの招待だったことを喜んで教えてくれた。知見をもった運営側の姿勢は、スタートアップとの信頼関係構築にもつながっており、AI時代の展示会は主催側もAIの理解をしていることが求められる。

Ashiraseのサービスは、スマートフォンを見ることなく、目的地への方向を振動で教えてくれるのが特徴だ。日本ではすでに600名以上の視覚障害者が利用しており、今後はグローバル展開を本格化するという。全盲の方だけでなく、旅行者や地図アプリに頼らず街を歩きたい人にも魅力的な提案である。

また、同じくAIアベニューに出展していたフランスAIスタートアップVrai AIにとっては、VivaTechが初めての公式お披露目の場だった。Vrai AIはAIを活用し、ブランドの偽造品、偽薬、偽札などの偽造品を99.7%の精度で検知できるという。展示ではラコステの本物と偽物を並べ、カメラをかざすだけで即座に判定する様子が紹介されていた。創業の背景には、CEOの親族が偽薬を摂取し命の危険にさらされた経験があり、偽造品によるリスクを防ぎたいという思いが原点となっている。医薬品や衣類、サングラスなど幅広い分野に対応し、日本の車の部品メーカーの流通にもすでに活用されているという。

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文=西村真里子

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