北米

2025.06.19 09:00

「駆け込み需要終了」の米経済、小売売上高は「2カ月連続の減少」に

bluestork / Shutterstock.com

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米商務省が6月17日に発表した5月の小売売上高(季節調整済み)は前月比で0.9%減少し、2カ月連続の減少となった。この落ち込みは、トランプ政権が中国および欧州連合(EU)との貿易交渉を進める中で、関税措置をめぐる懸念を背景に、消費者が支出を抑えていることを示している。

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この比較的大きな減少は、米国勢調査局のデータで5月に3.5%減少した自動車および自動車部品の販売の落ち込みに牽引された。

このデータはまた、消費者が食料品支出をわずかに減らしたことを示しており、食料品店および酒類販売店での支出は0.7%減、レストランおよびバーでの支出も0.9%減となっていた。建築資材、電子機器、ヘルスケア関連製品への支出もすべて同様に減少した。しかし、家具や衣料品、スポーツ用品、総合小売店およびオンライン小売業者への支出は、ここ1カ月でわずかに増加した。

アトランタ連邦準備銀行は17日、第2四半期の実質国内総生産(GDP)成長率予測を、先週発表した3.8%からわずかに下方修正して3.5%とした。

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関税前の駆け込み需要とその反動

今年3月から4月にかけての小売支出は、関税の発動前の駆け込み需要を受けて、異例の高い伸びを見せていた。米国勢調査局の最新データによれば、3月の自動車および自動車部品の支出は8.9%増という驚異的な伸びを記録した。

EYパルテノンの上級エコノミスト、リディア・ブスールは「3月にここ2年で最も高い月次販売があったことから、6月も引き続き『需要の先食い』による自動車販売の弱さが続くと見ている」と述べた。米国勢調査局は当初、4月の小売売上が約0.1%増加したと報告していたが、その直後にその試算を改め、0.1%の微減としていた。

ガソリン支出も5月に約2%減少したが、これはガソリンの価格の下落によるものと見られている。25州のガソリンの平均価格は現在、1米ガロンあたり3ドル(1リットルあたり約114円。1ドル=144円換算)を下回っているが、業界アナリストはこの状況が長く続くとは見ていない。イスラエルとイランの間の紛争は、ホルムズ海峡を通じた原油の輸送を脅かすものであり、原油価格を押し上げる可能性があると、米国エネルギー情報局(EIA)は指摘している。

市場への影響と今後の見通し

エコノミストらはフォーブスに対し、直近のデータは、関税や国際紛争など不確実性の高まりを受けて消費者が懸念を強めていることを示していると指摘した。「家計のバランスシートは依然健全だが、政策の不透明感や雇用市場の先行き見通しの悪化、関税への不安が続く中で、消費者はますます慎重かつ選別的な支出を行っている」とEYパルテノンのブスールは述べている。

彼女は、今年の後半にかけて「消費支出の急減速」が起こり、2026年に回復に転じると予測している。

一方、ノースライト・アセット・マネジメントの最高投資責任者、クリス・ザッカレリは、「米国の消費者は、関税リスクや貿易の混乱にもかかわらず、これまで経済成長をけん引してきた」と述べつつ、「もし消費者の支出が減速すれば、それがレイオフにつながり、支出減と失業増という悪循環に陥る可能性がある」とコメントした。

ザッカレリは、近い将来に市場に影響を及ぼす要因として、トランプ政権の中国およびEUとの貿易交渉、イラン情勢の先行きに注視していると語った。ただし彼は、直近の消費者支出の減少が「一時的なもの」という可能性も指摘した。自動車とガソリンを除いた月次の小売支出が減少したのは、年初から現在までで1回のみとなっている。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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