教育

2025.06.25 08:30

川上量生×本城慎之介×寺田親弘「僕らが学校をつくって考えたこと」

川上量生|ドワンゴ顧問(写真左)・本城慎之介|軽井沢風越学園理事長(同右)・寺田親弘|神山まるごと高専理事長(同中央)

川上:そうですよね。人間のI /O(Imput/Output)は体ですからね。もしくは、文字情報の摂取よりも、人間の身体コミュニケーションでやっている情報処理の方が大きいので、勉強ばかりしていると偏った人間になりますよね。風越学園の1学年は何人くらいいるんですか?

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本城:25人くらいですね。異年齢のかかわりが多いので、学年を超えてお互いを知っている。「あのお姉ちゃん、お兄ちゃん」じゃなくて「◯◯くん、◯◯ちゃん」という名前で幼児も上の子たちを知っているし、上の子たちも小さい子のことを名前でわかる。300人くらいだとそれができるし、保護者も入れると、大体1,000人くらいのコミュニティで、ちょうどいいサイズ感だと思っています。

川上さんが言われたように、テストの点数のように見えるかたちでは測りにくいのですが、本人のなかに学びが蓄積していることは間違いない。蓄積していったものが言葉や絵、音楽、身体表現で表出してきたときに、初めてその蓄積された経験が、本人にも他者からも見える。だから、虫が好きな子たちはずっと虫と遊んだり、捕まえたりしていると、虫を描写するときは、絵でも作文でも、すごく新鮮で、鮮明なイメージで描く。動画などのメディアを通じての知識ではなく、本物の体験をしているからこそ表現できるんだと思うんです。トンボを何匹も捕まえて、その羽をずっと観察していて、「もしかするとこれを何かに応用できるかも」と関心が高まる。そして、その子が神山まるごと高専に進学してロボット研究でそれを応用するとか。本物を知っているという経験は大切なんです。

川上:映像で見てもダメなんですね。実際に行かないとわからない。難しいですね。

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本城:学ぶ環境は重要ですが、軽井沢にいるからといって、みんな自然や本物にいつも触れているかというと、そうでもない。普通にスマホとかゲームとかYouTubeとかを見ている。どんなに田舎にいても使えるから、人口1000人の村だって、六本木の子どもたちとほぼ同じ遊びをしていますよね。

川上:家から出すちょっとした工夫というか、仕掛けは必要ですよね。

本城:ちなみに、川上さんは万博に行かれましたか?

川上:行きました。意外と良かったですね。大屋根リングとか。ただひとつ感じたのは、パビリオンで表現されている未来が、AIの登場によって結構ディストピアになっているな、と。1000年後の未来の人間像で、マトリックスみたいな、妖怪みたいなのが出てくるパビリオンもあって、これを見て、1000年後に希望を抱く人はいないだろうな、と(笑)。

本城:難しいですよね、1970年の大阪万博は、科学技術の発展で未来は明るいとみんな信じられていた。しかし今の時代はそうではない。社会学者の大澤真幸さんが言われているように、このまま人類が進むと持続可能性はない。別の進み方や道を選択しなければならない。そんな状況では、AIが提案する最善手ではなく、人間としてどんな“創造的悪手”を打てるのかという視点も大事なんじゃないでしょうかね。テクノロジーや効率性からは離れてみて、例えば泥遊びを徹底的にやってみると何が学べるのか、どう育つのか、そんなことをどんどんやっていかないと。

川上:そうですね。今ある議論って、資本主義の構造自体と、地球の資源、このふたつの面で持続可能性がないということで、それに対してのひとつの解決策がAIやロボットが働くので、人間が働かなくて済む、ということだったと思うんですが、いざAIやロボットが出てきてしまうと、その世界での「人間」って何? という。存在している意味があるのかと、突きつけられている気がしますね。だから今、子どもに何を教えたいかというと、料理や機織りとか、原初の人間がやってきたことですかね。


3人による座談会の続きは、本日発売の『Forbes JAPAN』8月号にてお読みいただけます。

編集=岩坪文子 写真=ヤン・ブース スタイリング=井藤成一 ヘアメイク=yoboon

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