川上量生(以下、川上):僕も、お二方と同じように、教育はたまたま人生で出合ったテーマです。僕はこれまでいろんな仕事をしているんですけど、基本は目の前の仕事をしているだけなんです。10年ほど前にたまたま教育をやりたいという人が周りに複数いて、話を聞いているなかで「それ、たぶんうまくいかないんじゃないかな、こうやったらうまくいくのに」みたいなことを考えているうちに、どんどんのめり込んできた感じですね。N高のようにオンラインで学べる大学があったらいいのにという生徒の要望から、今春にはZEN大学もできました。純粋に教育をやられている方からすると、少し腹の立つようなことをやっている3人かもしれません。でも、逆に一歩引いた立場の人が教育に参入するほうが、教育のいろいろな問題は解決することが多いのではないでしょうか。
経営視点からの学校
寺田:神山まるごと高専は、11社の企業から拠出や寄付金をいただいて、その運用益で奨学金も出しているので、学生にとっては実質無料の学校となります。最初からその考えがあったわけではなくて、普通に計算すると学費が200万円ほどになる。そうすると富裕層向けの選択肢がひとつ増えました、というだけでつまらない。当初開校資金として30億円集めていたのですが、100億あれば無料でできそうだな、と。資金集めは、本当に泣きそうなくらい大変だったのですが、試行錯誤しながらたまたまできた、という感じです。ですが、学校は本来社会に人を送り出すための機関なのに、自身の実体験としても、学校のなかにいるときは社会や会社は壁の向こう側のような、遠い存在だったと思うんです。偶然の結果ではあるのですが、企業にたくさん出資していただいているので、本気でかかわっていただいている。各11社のスカラシップ奨学生になるので、富士通さんなり、リコーさんなり、毎日企業から誰か来て、話している。田舎ですけど、学生にとってはすごく近い。意図したのは後からですが、それ自体には意味があるのではないかと思っています。
本城:神山まるごと高専の運営方法を最初聞いたとき、すごい仕組みだな、と思いました。風越もまだ赤字ですが、企業との連携は、幼児教育や義務教育でも可能性があると思っています。大学って企業との連携が多くありますよね。それは就職だけではなくて、研究という意味も大きい。幼小中の子どもたちもいろいろな商品やサービスを使っているし、使ってみての感想やアイデアをもっている。幼いころから社会に関心の目が向くように、企業との連携や接点を増やしていきたいですね。
川上:ちなみにN高はまだ採算全然取れていないです。投資しまくっているので。もちろん、どこかの段階で投資をやめれば採算が取れる、経済的に成立するかたちでは行っています。僕はビジネスだと思ってやっています。ビジネスで成功すると、規模が拡大できる。IT企業のデファクト・スタンダード(市場の競争や普及率によって事実上標準化されること)という考え方が大好きなので、やはりN高でデファクトを取りに行こうと思っている。N高はまだ小さいと考えているのですが、生徒数は3万人を超えて高校では日本一です。他の通信制高校は相当まねをしているし、全日制高校でもまねをしているところがある。それは人数が多いからなんですよね。人数を多くするためには、経済的に成立しなければならない。


