英国のフィンテック企業Revolut(レボリュート)の共同創業者でビリオネアのニック・ストロンスキーのファミリーオフィス(資産運用会社)は、ラグジュアリー旅行事業の立ち上げを見据え、世界各地で高級バケーション物件のネットワークを静かに構築している。
「ユートピア・デザイン」と名付けられたこのプロジェクトは、スペインやブラジル、ドミニカ共和国で高級物件の建設を進めており、ストロンスキーのファミリーオフィスが支援していることが、関係筋の証言や登記記録、フォーブスが確認した求人情報で判明した。
2023年に何の告知もなく設立されたユートピアは、「最先端の建築設計事務所」かつ不動産開発企業に位置づけられており、リンクトインのプロフィールや求人広告で「ユニークな場所でユニークな体験を提供する」と述べている。また、ある求人広告では「革新的な建築と壮大な自然環境を融合させたヴィラを設計・建設し、並外れた居住体験を求める人々に比類なき贅沢と排他性を提供する」と宣伝している。
これらの物件は、主にドミニカ共和国のカバレテやブラジルのジェリコsアコアラ、スペインのバルセロナで最も高級な地区のペドラルベスにある「高級ヴィラ」だとされる。これらの物件は、いずれもカイトサーフィン(風力を利用するウォータースポーツ)の人気スポットの近くに位置しており、ストロンスキーがこのスポーツに情熱を注いでいると語っていたことと一致する。また、英国とブラジルのオペレーションを所有する親会社は、英領ヴァージン諸島に登記されたKiteway(カイトウェイ)という企業となっている。
ユートピアの公式ウェブサイトには「近日公開」の文言と、複数の求人へのリンクしか掲載されておらず、その詳細は一切不明だ。サイトには他に、大型ヴィラやプールとその関連施設の完成予想図のみが掲載されている。
このプロジェクトは過去2年間で、建築家やデザイナー、エンジニア、建設管理者、高級ホテルやレストランの運営経験者などの多岐にわたる職種で人材を募集してきた。また、CGIや3Dアートのビジュアライゼーション経験者も多数採用している。
ユートピアのサイトは、ストロンスキーとの関係に一切言及していないが、このプロジェクトの求人は、ストロンスキーのファミリーオフィスの求人を手がけるリクルーターが掲載している。また、プロジェクトのリンクトインのページには、ロンドン中心部にあるストロンスキーのファミリーオフィス及び、彼が新たに立ち上げた2億5000万ドル(約360億円)規模の投資ファンド「QuantumLight(クアンタムライト)」の登録先と同じ住所が記載されている。
大物建築家の関与
英国の企業登記では、ユートピアHQリミテッドの取締役には、レボリュートとQuantumLightの幹部のエツィオ・マンテガッツァと、かつて著名建築家のザハ・ハディドの事務所に在籍していた建築家のニコス・ヤトロスが名を連ねていた。ヤトロスはリンクトインに、ユートピアの「元デザインディレクター」と記していた。現在は、両者とも同社の取締役を離れている。レボリュートは、この件に関するコメントを拒否した。
ユートピアHQリミテッドが英国知的財産庁に提出した商標出願からは、ユートピアが単なるテックビリオネアの別荘用の資産管理会社ではないことがうかがえる。この商標出願は、ユートピアをホテルやコンシェルジュサービス、ゲスト管理に関するソフトウェアなどの分野の企業に位置づけている。



