ブランドが群がるコメディ動画
ブランド各社は、こぞって彼のコメディ動画に群がっている。ワヒードはここ1年の間に、Google AdSenseやTモバイル、男性用ボディケア製品のオールドスパイス、NFLなどとのブランド契約を通じて、推定1650万ドル(約23億9000万円)を稼いでいた。
多くのクリエイターはブランド案件を後回しにするが、ワヒードは違う。自腹で制作費を出して、ブランドのCMが自然なコンテンツに見えるよう細部にこだわっている。「彼の映像はブランドのCMを観ているのではなく、ただアダムWを観ている感覚になる」とTikTokのクリエイター・マネージャーのエマ・グリボンは言う。この戦略は功を奏している。「私たちの目標は、広告のリーチを若く多文化でグローバルな層に拡大することだ」とNFLのマーケティング責任者イアン・トロンベッタは語る。「アダムのコメディはまさにそのためにある」
ワヒードのコメディ動画は、人々の日々の暮らしに根ざしている。「彼を起用すれば、特定の層を狙い撃ちする必要がない。彼のコンテンツは幅広い人々に共感される」と、オールドスパイスのキャンペーンで彼を起用したP&Gの広報マネージャーのジュワン・トンプソンは語る。ワヒードは動画のアイデアを、日々の体験やSNSのトレンド、ニュースの見出しなどから得ている。
「コンテンツは、その作り手を知らない人が観たいと思えるほど魅力的で、質が高くなければならない」とワヒードは言う。「僕のことを知らない人にとっても、共感できたり、面白いと思えたり、笑える内容の動画を生み出そうとしている」
ワヒードは、笑いのために高度な撮影技術と複雑な小道具を駆使している。「コメディの導入部の前フリやオチ、エンディングを全部詰め込んで人を笑わせるには技術がいる」とメタのクリエイター・パートナーシップの責任者ジャスティン・アンソニーは言う。「アダムはハリウッドの制作スタイルを取り入れている。彼は演出を行い、脚本を書き、複数のテイクを重ねて、アングルが完璧になるようにしている」とYouTubeのクリエイター・マネージャーのエマニュエル・ペレスは語った。
ワヒードのクリエイターとしての暮らしは過酷なものだ。「動画が1000万回再生されても、翌日には誰かが1億回の再生を叩き出す。数字を出し続けなければならないんだ」と語る彼は、2日に1本のペースで動画を投稿する。毎朝9時に制作を開始し、アイデア出しから撮影・投稿までを午後2時半までに終える。撮影はiPhoneで行い、制作や照明、編集を担当する5人のクルーがいる。「背水の陣のときにこそ、自分は最も力を発揮できる」とワヒードは語る。


