米国のリスク・インテリジェンス企業RANE(レイン)の中東・北アフリカ担当グローバルセキュリティー・アナリスト、フレディ・クウェリーは「イランでのイスラエルの軍事作戦が苛烈で精密なのは疑いありません。これはイラン・イラク戦争以来、イランが直面した最も重大な攻撃です」と筆者に語った。「それでもまだ、1980年代の戦争の規模や破壊には及びません。あの戦争は10年近くも続き、両国の経済を疲弊させ、数十万以上の人的損害を出しました。ただし、この戦争による経済的影響は、イラン国民にとって深刻なものになるでしょう」(クウェリー)
一方、米ボストン大学の客員研究員で、2020年の本『The Shadow Commander: Soleimani, the US, and Iran’s Global Ambitions(仮訳:影の指揮官──ソレイマニ、アメリカ、そしてイランの世界的野望)』の著者であるアーラシュ・アジジは、イスラエルによる現在の攻撃はかつてのイラクによるものよりも「すでに苛烈」だとの見方を示す。
アジジはイラクとの戦争では「イランへの地上侵攻も行われたので、違う側面がありました」としつつ、こう続ける。「しかし、当時の攻撃にはこれほどの衝撃と畏怖はありませんでした。また、サダムの軍隊はいまのイスラエル軍のような高度な技術も持っていませんでした」
テヘランやイランのその他の大都市には、こうした攻撃の際に多くの住民が十分身を守れるような施設も少ない。これも1980年代との顕著な類似点だ。
イラン出身の文学者アーザル・ナフィーシーは2003年の有名な回想録『テヘランでロリータを読む』のなかで、当時のテヘランには公的な防空壕も十分な民間防衛体制もなかったと振り返っている。
「戦争の8年間を通じて、政府が市民の安全と保護のためにしっかりとした対策を講じてくれたことは、ただの一度もありませんでした」と彼女はつづっている。「『シェルター』というのは実のところ、集合住宅の地下室や低層階のことで、そこにいても生き埋めになってしまうことがある。けれどほとんどの人は、自分たちがどれほど無防備な状態に置かれているのかに気づいていませんでした。あとになって、テヘランがほかの都市と同じように攻撃されるようになって初めて、それに気づかされたのです」


