マレーシアのビリオネア兄弟のリー・ヨウ・チョーとリー・ヨウ・センが支配するIOIプロパティーズは、資産価値が約90億ドル(約1.3兆円。1ドル=145円換算)と試算されるシンガポールおよびマレーシアの商業不動産のマネタイズ方法を検討している。
クアラルンプール市場に上場するIOIは、シンガポールにおける不動産投資を拡大しており、最近ではJWマリオットホテルとオフィスタワーを含む複合施設「サウスビーチ」の全所有権を取得することで合意した。この取引は、同施設を27.5億シンガポールドル(約3107億円。1シンガポールドル=113円換算)と評価し、その50.1%の持ち分を、ビリオネアのクウェク・レンベンとその一族が支配するシティ・ディベロップメンツから取得するものだ。
クアラルンプールのホンリョン投資銀行(Hong Leong Investment Bank)のアナリストのタン・カイシュエンは最近のリサーチノートで、「安定したキャッシュフローを誇る一等地物件のサウスビーチは、IOIプロパティーズが計画する、シンガポールでのREIT(不動産投資信託)上場という資産のマネタイズ施策において、中核を担うのに適している」と述べていた。REITとは、投資家から資金を集めて不動産に投資し、その賃料収入などを分配する金融商品であり、IOIはこれを上場させることで不動産資産を証券化し、資金調達や企業価値の向上を目指している。
タンによれば、サウスビーチの複合施設とマリーナベイに最近完成したIOIセントラル・ブールバード・タワーズを組み入れたIOIのシンガポールREITは、早ければ2027年に資産総額80億シンガポールドル(約9000億円)で上場する可能性がある。IOIはまた、ホテルと高級住宅から成る「Wレジデンス・マリーナビュー」と呼ばれる新たなシンガポールのランドマーク物件の開発を進めている。
さらにIOIはマレーシアにおいてもREITの上場を計画中で、早ければ来年にも資産価値80億リンギット(約2720億円)規模のREITを上場させる可能性があるという。同社のマレーシアでの資産には、クアラルンプール郊外のプトラジャヤにある「IOIシティ」と呼ばれる商業施設が含まれている。IOIの旗艦物件であるこの施設は、同国最大のショッピングモールやオフィスタワー、ホテルなどで構成されている。
IOIはホンリョン投資銀行のレポートで指摘されたふたつのREITに関する上場計画について肯定も否定もしなかった。「当社は、マレーシアとシンガポールの双方で今後も持続的な成長を目指し、資産のマネタイズに関してさまざまな可能性を戦略的に検討・評価していく」と、同社はフォーブスに宛てたEメールで述べた。
合計で52億ドル(約7540億円)の資産を保有するリー兄弟は、マレーシアでも最も裕福な一族のひとつとされる。ふたりの父で、2019年に亡くなったリー・シン・チェンは、パーム油と不動産で財を成した富豪として知られていた。兄のヨウチョーは上場企業IOIコープを通じてパーム油事業を、弟のヨウセンは不動産事業をそれぞれ率いている。



