喜ぶのはまだ早い
今回の判決は朗報だ。だが、まだ大きな課題が残っている。
・政府は上訴できる。そうなれば最終的な決定は先送りされ、判決が覆る恐れもある
・手続きの遅れは残っている。凍結以前から待ち時間は長かった
・いまだUSCISからの公式発表はない。申請者本人に直接連絡しているのでない限り、当事者が憶測に振り回されかねない
実際、5月28日の判決からわずか数日後、トランプ政権は(連邦最高裁が中南米4カ国から避難してきた移民の在留資格取り消しを容認する判断を下したことを受けて)連邦地裁に対し、判決の棄却を求めた。ウクライナ避難民の支援者には訴訟を起こす権利はなく、強制送還は真の脅威ではないというのが政府の主張だ。
このような主張は、多くのウクライナ人だけでなく米国人の耳にも空虚しか聞こえない。民間人の住む集合住宅が空爆されている紛争地帯に人々を強制送還するというのは政策ではなく、モラルの欠如でしかないという現実を無視している。
トランプ大統領が79歳の誕生日を迎えた6月14日、首都ワシントンで米陸軍創設250周年を記念する軍事パレードが開催される中、全米各地で大規模な抗議デモが行われ、トランプ政権の移民政策に非難の声を上げた。今後、ウクライナ人だけでなく、米国人全てにとって適切な移民政策とは何かという議論が、連邦議会での最重要議題になるだろう。トランプは中東やウクライナの安全保障問題に対処する一方で、国内の移民問題にも目を光らせることを求められる。
米国の倫理観が試されている
今この瞬間に試されているのは、米国の倫理観である。米国はかつて、平和を守る約束と引き換えにウクライナに対して核兵器の放棄を求めた。ウクライナの人々は今、その約束を守ってほしいと訴えている。そして、求めているのは武器ではなく、思いやりと合法的な保護なのだ。
米国に避難してきた18万7000人以上のウクライナ人にとって、強制送還からの救済を意味する今回の判決は希望の光となった。それはまた、移民とは単なる政策ではなく、人間であるということを思い出させるものでもある。一件一件の申請の向こう側に、戦禍を逃れてきた家族がいて、世界はかれらが生き残る手助けをするとかつて約束した。今こそ行動する時だ。歴史は、ロシアがウクライナに何をしたかだけでなく、世界がそれに対して何をしたか、あるいはしなかったかを後世に伝えるだろうから。


