先ほども言ったように、そもそも人間は意識しないかぎり、自分中心の視点でものを考えがちなのです。これを心理学では「自己中心性バイアス」と言います。
特に子どものうちは、誰しも自己中心性バイアスが強いのですが、大人になるにつれて徐々に相手の気持ちを考えられるようになります。しかし、ビジネスシーンで「売らなくては」というプレッシャーの掛かる場面だと、心の余裕をなくして視点が自分中心に傾いてしまうのでしょう。
自己中心性バイアスにならないためには、意識して視点を変える思考法を身につけることが大事です。
相手目線になるために必要な具体的な行動
ただ、まずみなさんに知ってほしいのは、相手視点になるためのテクニカルな話よりも、もっと大事なことがあると思っているんです。それは、相手のことを真剣に考えることです。真剣になれば、自然と相手の立場に立てるものです。
「言われなくても、私はいつも仕事相手やお客さんのことを真剣に考えていますよ」
あなたは、そう言うかもしれません。
それが本当なら、あなたは常に上手くいっているはずです。
けど、実際にはなかなか上手くいかずに悩んでいて、何かしらのヒントを求めてこの記事を読んでいるのではないでしょうか。
相手のことを真剣に考えた時、具体的に取るべき行動は何か。どうすれば無理なく相手の視点に立てるのか。
そのために必要なのが「準備」です。
東京の麻布台ヒルズがオープンした当日に、大事な仕事の関係者と打ち合わせの後、そこで食事でもしようと、みんなを誘ったことがありました。
全員で6人いましたが、そのなかの1人が「初日だからどこもいっぱいですよ」と、状況を知らせてくれました。
ブラブラとヒルズ内を歩いていましたが、実際に多くの人だかりでレストランはどこも長ちょう蛇だ の列。そこで私が一番人気のある店にふらっと入って行きました。並んでいる人を見ると20組以上はいたでしょうか。
「野呂さん、めっちゃ並んでますよ」と誰かが言うのもかまわず受付に行くと、店のスタッフがひと言。「あっ、野呂様、お席をお取りしております」と。そこで初めて一緒に行った人たちは「なんだ、野呂さん、席取ってあるんじゃないですか!」と驚いています。
そこで種明かし。「当たり前じゃないですか。(お客が押し寄せる)1日目なんだから」と。
これって、最初から「いい店、予約しています」と言ってしまえば、当たり前の期待しかされません。だから、期待されないように努力して準備を怠らないようにするのです。
麻布台ヒルズ開業の1日目ですから、実を言うと1カ月以上前から仕込んでいます。


