稲吉は、大学卒業後、実家のある愛知県蒲郡市の市役所で公務員生活を送ったのち、94年に学習塾「がんばる学園」を開校。生徒数を伸ばすと、FC化を始める。その後、FCオーナーらとの会食で使っていた岡崎市内の外食チェーンを引き継ぎ、店を繁盛させてこれもFC化。2004年には別の外食チェーンへ初のM&Aを実施した。
「塾の加盟企業のオーナーさんは、各地域で複数のFCを運営するメガフランチャイジーに成長していることが多く、M&Aで新規事業を始めると彼らがその地域を網羅してくれます。さらにFCロイヤリティを後払い制にしたことで短期間で成長できた」
FCに軸足を置いたこの実績は全国に広がり、さらにM&Aの声がかかるようになった。
ちょうどこのころ、教育事業のさらなる成長のために目をつけたのが英会話教室だった。この事業は絶対的な知名度と店舗網が必要だと考えた稲吉にとって、NOVA譲渡の話は渡りに船だった。NOVAを買収し、雇用を維持し、滞っていた受講を生徒に提供するため、受講料を原価分のみの75%割引にすると、半年後に黒字に転じさせた。
しかし08年のリーマン・ショックで赤字に転落。キャッシュフローは黒字だったが、資金繰りが苦しくなり、09年、断腸の思いで日本振興銀行に自社株を売却。そして翌年、まさかの日本振興銀行が破綻。祖業の教育部門を買い戻すことに。「多くを学ぶいい機会になった」と稲吉は振り返る。
ここから稲吉は一気に事業を拡大させていく。英会話や学習塾を軸に、留学支援などの教育事業関連企業、外食チェーン、プロスポーツチームも次々にM&Aを実施。直近では語学教材で知られる朝日出版社のM&Aが話題になった。
「私のM&Aの基本は継続雇用。従業員を絶対的に尊重したうえで、事業を改善していくことです。企業の価値をM&Aで最大化させる。その強い思いは当初から変わりません」


