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2025.06.17 15:30

イスラエルが開戦数日でイランを圧倒 中東のパワーバランス、湾岸戦争以上の激変

イランの首都テヘランで2025年6月16日、イスラエルによる空爆が報じられたあと黒煙を上げる国営テレビ局イラン・イスラム共和国ニュースネットワーク(IRINN)の建物(Stringer/Getty Images)

また、イランの現体制が1979年に権力を掌握した直後にやったように、イランが残っているヘリコプターや戦闘機を動員してクルド人の反乱を鎮圧しようとした場合、イスラエルが飛行禁止区域を設けて監視に当たるのかも不明だ。

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ブッシュ(父)がフセインと対決するために多国籍軍を結成した際、彼は「新世界秩序」の出現について語っていた。つまるところ、湾岸戦争はこの地域の現状回復のための戦争であり、おおむね目的は達成された。最近のじつに興味深い学術研究によると、フセインはソ連崩壊後のポスト冷戦期に、一極世界が到来することを恐れていたという。彼は新たな世界秩序と米国の覇権が5年続くと予想し、その間に米国とイスラエルがイラクを攻撃する機会を狙うとみていた。クウェートへの侵攻は、彼なりの賭けだった。それは見事なまでに裏目に出た。

イランの当局者らは近年、多極世界や、米国が唯一の超大国として君臨する時代の終わりを繰り返し唱えてきた。ロシアがウクライナに、あるいは中国が台湾に関して抱く思惑と同様に、イランもまた、世界が多極化すれば地域での自国の戦略的利害や脆弱なアラブ諸国に対する覇権に有利にはたらくと考えているようだ。とくに、米軍が中東から撤収することになればなおさらだろう。イスラム組織ハマスによる2023年10月7日の悪名高いイスラエル攻撃は、少なくとも部分的には、米国が推進していたイスラエル・サウジアラビア間の和平合意(国交正常化)の妨害を目的としていた。それが実現すれば、地域の再編につながり、パレスチナ人がますます置き去りにされるおそれがあったからだ。その後の戦争はイスラエルによるガザ地区の壊滅的な破壊を引き起こし、さらにレバノンのヒズボラをはじめとするイランの代理勢力が次々に破壊される結果になった。2024年9〜10月にヒズボラが喫した壊滅的敗北に力づけられ、同年12月には、シリアのイスラム主義の反体制勢力がバッシャール・アサド政権を打倒した。これら一連の動きが、イスラエルによる現在のイラン攻撃に道を開くことになった。

わたしたちがいま目にしているのは、中東において1991年の湾岸戦争、あるいはそれ以降のどの時期よりも大きく、重要なパワーバランスの変化である可能性が高まっている。それが今後、中東だけでなく世界に広範な影響を及ぼしていくことは間違いない。

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forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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