イラン国内に潜伏する工作員による精密なドローン(無人機)攻撃を別とすれば、イスラエルは主に空軍力を頼みに目的を達成しようとしている。これは両国間の距離を考えれば、当然とも言えるかもしれない。いずれにせよこの作戦は、1980年にサダム・フセイン政権のイラクがイラン南西部フゼスタン州に侵攻した直後に与えた以上に大きな破壊を、イラン各地にもたらしている。イランが直近で通常戦力による軍事攻撃を受けたのは、この侵攻に始まり1988年まで続いたイラン・イラク戦争だった。
イラン側の報告ではイスラエル軍機の一部を撃墜したと主張しているが、現時点で確認されていない。ただ、イスラエル空軍のF-16戦闘機がイラン領空内に相当深く入って行動しているという事実は注目に値する。これは、イスラエルがイランの戦略防空システムはもとより、戦術防空システムも入念に弱体化させていることを示している。ここで想起すべきは、湾岸戦争中、米空軍がバグダッド近郊のイラクの核関連施設を攻撃した際、F-16を複数失い、F-117「ナイトホーク」ステルス攻撃機に頼らざるを得なくなったことだ。また、イラクを爆撃していた米軍機は当時、イラクの南のサウジアラビアにある巨大基地や、近海に展開している空母を利用できたのに対して、イスラエル軍機は今回、1600km程度飛行して攻撃を実施している。
興味深いことに、中東ニュースサイト「ミドルイースト・アイ」によると、イスラエルは特別に改修して航続距離を伸ばしたF-35ステルス戦闘機を使用しているという。これにより、イスラエル空軍の主力戦闘機は空中空輸なしで、イランを攻撃して基地に帰還することが可能になっている。2021年の記事で推測したように、イスラエルがF-35に増設した燃料タンクは、重要なステルス性を損なう落下式のドロップタンクではなく、機体一体型のコンフォーマルタンクである可能性が高い。
イランは湾岸戦争に関与せず、米国のトマホーク巡航ミサイルが自国の空域を通過するのも黙認した。一方で思わぬ恩恵にあずかった。フセインは虎の子のフランス製・ソ連製戦闘機を守るべく、一部を隣国のイランに向かわせた。イランはそれらを没収し、自国の空軍に組み込んだ。イランはそれ以降、ソ連製MiG-29A「フルクラム」戦闘機を同じころに入手した以外、空軍戦力を更新しておらず、時代遅れのその空軍戦力はイスラエルにとって実質的な脅威になっていない。


