VC

2025.06.17 13:00

「Yコンビネータ」から2人の投資家が離脱、AIに注力の新ファンド設立へ

「スタンダード・キャピタル」を立ち上げたダルトン・コールドウェル(Photo by Jesse Knish/Getty Images for SXSW)

「スタンダード・キャピタル」を立ち上げたダルトン・コールドウェル(Photo by Jesse Knish/Getty Images for SXSW)

過去20年間にわたりシリコンバレーを代表する新興企業を輩出してきたことで知られるスタートアップ育成機関「Yコンビネータ(Y Combinator)」から、ふたりのパートナーが離れることが明らかになった。長年パートナーを務めてきたダルトン・コールドウェルとポール・バックハイトのふたりが、初期段階のスタートアップを支援する新たなファンドを立ち上げるという。

新ファンド「スタンダード・キャピタル」とは

「スタンダード・キャピタル(Standard Capital)」と呼ばれるこのファンドは、フォーブスが確認した投資家宛てのEメールによれば、スタートアップの株式10%と引き換えに500万ドル(約7億2500万円。1ドル=145円換算)から1000万ドル(約14億5000万円)を出資する。これに対しYコンビネータの場合は、50万ドル(約7250万円)を出資して7%の株式を取得している。

スタンダード・キャピタルのファンド全体の規模は、まだ正式に発表されていないが、情報筋は「2億5000万ドル(約362億5000万円)を大きく上回る規模になる」と述べている。また、このファンドは年間約20社を支援対象とし、4つのバッチに分けて受け入れを行う予定とされる。

Yコンビネータ自身もこの新たなファンドに出資予定で、ストライプのCTO(最高技術責任者)室に所属するブライアン・バーグも立ち上げに参画する。

コールドウェルはフォーブスの取材に対し、「私は人工知能(AI)の進化と成長の速さを間近で見てきた。今の時代、AIに関する説得力のあるアイデアを持つ人は、起業を検討すべきだと思う」と語った。Yコンビネータで最も長く務めたパートナーのひとりである彼は、新しいことに取り組みたいと述べている。

Yコンビネータは、「コールドウェルのこれまでの貢献に感謝する。彼がスタンダード・キャピタルを立ち上げることを支援したい」とコメントした(彼は今後も名誉パートナーとしてYコンビネータに関与するという)。

連続起業家コールドウェルと、Gmailの生みの親バックハイト

コールドウェルとバックハイトは、それぞれスタートアップで実績を積んだ後にベンチャーキャピタル(VC)の世界に足を踏み入れた。コールドウェルは自身で立ち上げた音楽系SNSのImeemを2009年にマイスペースに売却した。バックハイトはグーグルの初期社員で、Gmailの生みの親として知られる。同社の有名なモットー「Don’t be evil(邪悪になるな)」の提案者ともいわれている。

2010年にYコンビネータに参加したバックハイトは、インスタカートやコインベース、Twitchなどに助言を行った。コールドウェルは2011年にパートタイム・パートナーとして参加し、その後投資部門のマネージング・パートナーに昇進。ドアダッシュやBrex、Deelといったユニコーン企業の支援に携わった。

次ページ > 批判と競合の台頭に直面するYコンビネータ

編集=上田裕資

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事