経済・社会

2025.06.17 11:45

イスラエルに見くびられたトランプ米政権

2025年6月14日、ワシントンDCのナショナル・モールで行われた陸軍生誕250周年記念式典で、ドナルド・トランプ大統領は立ち上がり、軍隊に敬礼した(Photo by Doug Mills - Pool/Getty Images)

実際、イスラエルは米国に事前にイラン攻撃を通告していた。米国は、自国民の中東地域からの退避を進めることと、攻撃実施後に「我々はイスラエルによる攻撃には加わらなかった」と弁解するのが精いっぱいという体たらくだった。

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攻撃実施後のトランプ氏の発言もひどかった。トランプ氏は攻撃実施前には、イスラエルに自制を求めていたが、実施後は「非常に成功した」と態度を180度変えた。米ニュースサイト「アクシオス」によれば、トランプ氏は13日、イスラエルによる攻撃が米国とイランとの核協議を難しくする可能性を問われ、「そうは思わない。むしろ逆だろう。彼らは今真剣に交渉するかもしれない」と強がった。米とイランの6回目になる核協議は、オマーンで15日に予定されていた。

トランプ氏の主張は「イスラエルの攻撃で弱気になったイランが米国との交渉に応じる」というものだったが、イランがイスラエルの同盟国である米国に態度を硬化させるのは火を見るよりも明らかだった。実際、米国は関係者の退避を進めていた。イラン外務省は14日、米国との核協議が中止になったと発表した。イラン側はイスラエルとの軍事衝突が終結すれば、交渉を再開させる意図があるようだが、トランプ氏が語ったように「弱気になって交渉に応じる」ということではない。むしろ、イランに駐在経験がある日本の元外交官は「イラン中央政府の統治は完璧ではない。トップを殺害されて怒り狂っているイスラム革命防衛隊や軍関係者らの跳ね上がりが、独自にイスラエルや米国を狙ったテロ活動に走る可能性もある」とも指摘する。

この元外交官は「トランプは自分の力を過信し過ぎている。ウクライナやイランがどんな国なのかすら理解していない」と語る。そのうえで、「それでも、別に誰も困らない」とも語る。「国際社会も、トランプがウクライナや中東の戦乱を止められるなどとは思っていなかった。トランプはTACO(Trump Always Chickens Out=トランプはいつもびびってやめる)だからだ」。トランプ氏が気にするのは、マーケットの反応だけではないようだ。トランプ氏は14日の軍事パレードで悦に入っていたが、その姿を「裸の王様」に重ねて見た人も多かっただろう。

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文=牧野愛博

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