論文によると、ケルティック・ディープでは、海泥の堆積の大半は過去1万年間に発生しており、それ以前の潮汐条件はエネルギーが高すぎて細粒土砂が堆積できなかった。3つ目の海泥堆積域のフレーデン・グラウンド(Fladen Ground、FG)は、英スコットランドのアバディーンの北方約160kmに位置し、約1万7000年前にこの領域が完全に水没して以来ずっと静穏な潮汐環境にあるようだと、論文は指摘している。
泥は砂や砂利よりも有機炭素を貯留する能力が高いという理由で重要だと、ロズビーは指摘する。
だが、重要な違いが生じるのは、この点だ。
ウォードによると、海洋環境における有機炭素の生成によって地球の大気から二酸化炭素(CO2)が取り除かれる(カーボンシンクとして機能する)可能性がある。
無機炭素については、同じことが言えない。
海底の有機炭素は、陸地および海洋の生命体(もしくはかつて生きていた生物)の両方に由来するのに対し、堆積環境中の無機炭素は大部分が貝殻や骨から成っている。無機炭素(主に炭酸カルシウムCaCO3)は、CO2を海洋環境から再び大気中に放出することにより、生物生存圏に大きな悪影響を与える恐れがある。このような理由で、貴重な海泥が非常に重要になるわけだ。
では、海底の泥とは何だろうか。
ロズビーによると、泥は粒径63ミクロン(1ミクロン=1000分の1mm)未満の堆積物で、この数値が泥と砂の間の科学的な境界となる。砂は、ビーチで見られるような63ミクロン以上の大きさの粒だ。
泥は、長い時間をかけてどのように蓄積するのだろうか。
ロズビーによると、泥は非常に厚い堆積層を形成できる性質があるため、膨大な量の炭素を貯留できる。泥が有機炭素の貯留にとって重要となる要因は、泥の比表面積(単位質量当たりの粒子表面積の総和、粒子が小さいほど大きくなる)に加え、厚い堆積層を形成する傾向があることだと、ロズビーは説明した。
古代の気候
ウォードによると、数千年前は一部地域の氷床内に閉じ込められている水の量がはるかに多かったため、沿岸海域が今よりはるかに浅かった時代で、潮汐の動態が現在と大きく異なっていた。時代を経るにつれて、水深が変化し、陸地の配置や沿岸海域の形状が大きく変わったという。


