イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は13日に始めたイランへの攻撃について、イランの核開発計画が急速に進み、イスラエルの「存立にとって差し迫った脅威」になったため必要だったと主張した。イスラエルによる公式な正当化(開戦事由)はイランの核開発阻止だが、イスラエルはより広範な戦略目的を持っている可能性が高い。
国際社会ではイランの核開発計画が注目されてきたが、これまで実際に被害をもたらしてきたのはイランの通常型ミサイルである。イスラエルが今回、イランの核関連施設だけでなくミサイル基地も攻撃目標に据え、とくに格納庫から発射台へのミサイルの移動を阻止することを狙ったのはそのためだ。イスラエルはさらにイランの防空網の一部も攻撃し、数十のレーダーサイトや発射機を破壊している。
イランに対する攻撃では最終的に、こうした通常戦力に対するダメージこそ最も大きな影響を及ぼすことになるだろう。
イランの核開発はどこまで進んでいるのか
イランは核兵器を保有するには至っていないが、2週間以内に核兵器8発分の核分裂性物質を生成できる段階にあるとみられている。イスラエルのダニー・ダノン国連大使は、イスラエルはイランの秘密計画に関する情報を入手したとし、計画には核爆弾の製造に必要なすべての要素が含まれると主張している。核爆弾をつくるというイランの目標は、イスラエルが2024年9月にレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの指導者ハサン・ナスララを殺害し、イランの最も強力な代理勢力を著しく弱体化させたことを受けて加速したという。
核爆弾を製造するにはウランを90%まで濃縮する必要があり、イランは60%まで濃縮したウランの備蓄を増やしてきた。イランの核開発計画は、2015年に結ばれた核合意が破綻し、イランの核関連施設に対する国際的な査察が停止したあとに加速した。イランでは十数カ所の拠点で核関連活動が行われており、最大の濃縮施設は中部ナタンズにある。この施設も今回の攻撃で目標になった。
イランはイスラエルによる2024年10月の空爆の結果、防空体制がさらに弱体化し、主要な核関連施設周辺の防空も手薄になっている。とはいえ、イランの核関連施設の大半は地下にある。こうした地下施設に対して意味のある損害を与えるには、相当な破壊力のある兵器に加え、各施設の防護やレイアウトに関する正確な情報も必要になる。



