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2025.06.16 18:00

イスラエル、イランの核施設破壊は困難か ミサイル戦力には大打撃

軍事パレード中、トラックで運ばれるイランの準中距離弾道ミサイル「ケイバル・シェカン」(左)とイラン初の極超音速ミサイル「ファタフ」。2024年9月21日、テヘラン南郊(Morteza Nikoubazl/NurPhoto via Getty Images)

一方のイスラエルは、優れた防空技術も有している。イスラエルは、短距離のロケット弾などを迎撃する「アイアンドーム」、より長距離のロケット弾やミサイルなどを迎撃する「ダビデ・スリング(ダビデの投石器)」、弾道ミサイルを迎撃する「アロー」など、多重のミサイル防衛網を構築している。これらの防空システムは2024年4月、イスラエルによる在ダマスカス・イラン大使館空爆に対するイランの報復作戦でも試された。「真の約束」と名づけられたこの作戦では、ドローン(無人機)約170機、巡航ミサイルと弾道ミサイル計約150発が使用されたが、イスラエルの被害は最小限に抑えられた。大多数は西側のパートナー諸国の協力で、イスラエル国外で撃ち落とされたとされる。

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また2024年10月、イランが弾道ミサイル約150発でイスラエルを攻撃した時にも、そのほとんどが迎撃され、被害はわずかだった。それでもイスラエルは今回の攻撃で、イランのミサイル発射能力をさらに低下させることを狙った。イスラエルが13日に攻撃した目標には、イラン北西部タブリーズのミサイル発射拠点も含まれており、ここは昨年10月のミサイル攻撃で使用されていた。

通常兵器が打撃を受けているイランは、イスラエルに大きな破壊をもたらす能力が不足している。実際のところイランはこれまでも、地域の不安定化を狙った比較的小規模で目標を絞ったミサイル攻撃を選んできた。たとえば2019年、イランは代理勢力にサウジアラビアの石油施設をドローンで攻撃させ、世界の石油供給を混乱させた。2020年には、イラン領内からイラクの米軍基地2カ所に向けて弾道ミサイルを発射した。2024年1月には、米軍が駐留するイラク西部のアサド航空基地を弾道ミサイルとロケット弾で攻撃した。いずれも混乱を引き起こすことを目的とした攻撃であり、軍事面で持続的なダメージを与えることはほとんどなかった。イランは14日、ミサイルとドローンの集中攻撃でイスラエルに反撃し、これまでよりも大規模な報復を実施したが、イランにとって最も効果的な報復方法はやはり破壊工作に重点を置いたものだろう。

イランの核開発阻止はなお難題

イランの核開発計画を阻止することは、米国にとってもイスラエルにとっても依然として重要な優先課題だ。ドナルド・トランプ米政権はイランとの2国間協議を重視する姿勢を示していたが、イスラエルはその交渉の行方を見守るほど辛抱強くはなかった。

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イスラエルは、イランが弾道ミサイルに核弾頭を搭載する準備を整えているという情報を持っていると主張し、今回のイラン攻撃を正当化している。しかし、核施設に対する攻撃は過去に、限定的な成果しかあげられなかった。それどころか、イスラエルが1981年6月にイラクの原子炉を攻撃した時には、ある程度の損害を与えながらも、かえってイラクの政権に核兵器取得への決意を強めさせる結果になった。

イランの核開発の野望を完全に阻止することは、おそらく不可能だろう。だが、イスラエルはこの機会を捉えてイランのミサイル戦力を著しく弱体化させている。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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